SpaceStep読者の皆さま、こんにちは。株式会社2moonの伊巻和弥です。世界各国の宇宙産業の最前線を読み解き、日本企業の活路を探ってきた本連載も、今回でいったん最終回を迎えます。締めくくりに取り上げるのは、2026年7月に東京・虎ノ門で開催された「SPACETIDE 2026」です。協賛企業として参加した私が会場で感じたのは、海外の投資家や宇宙企業が、日本を具体的な投資先や事業拠点として見始めていることでした。世界は日本の何を評価し、どこに懸念を抱いているのか。海外プレイヤーの相次ぐ日本進出や、国際共同事業を後押しする仕組みにも触れながら、日本に巡ってきた好機を、いかに事業へつなげるかを考えます。(解説=伊巻和弥/文=SpaceStep編集部)
解説するのは

株式会社2moon
伊巻 和弥 さん
新潟県上越市出身。宇宙業界で30年以上にわたり、有人宇宙飛行、人工衛星、探査ミッションなど、多様なシステムの設計・運用に従事。株式会社2moonを2023年に設立し、宇宙ビジネス参入支援、衛星打ち上げ支援、宇宙開発技術支援、地方創生・DX支援、企業コンサルティング、宇宙を活用したSTEM教育などを幅広く手掛ける。
これまで、米国の有人宇宙ミッションや国際宇宙ステーション(ISS)に関わるマニピュレータ開発・運用、月・火星探査プロジェクトの運用設計、衛星データを活用した地方自治体や産業向けの実証事業などを主導。深い技術知見と国際調整力、幅広いネットワークを背景に、40社以上のコンサルティング実績を持つ。
2026年7月6日から9日までの4日間、東京・虎ノ門で国際宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2026」が開催されました。
一般社団法人SPACETIDEが主催するこのイベントは、今回で11回目を迎えました。国内外の宇宙関連企業、政府機関、研究機関、投資家、スタートアップ、そして異業種企業が集まり、低軌道ビジネス、月・シスルナ経済、安全保障、宇宙政策、異業種連携など、多岐にわたる議論が交わされました。
今回のテーマは「Unlocking Space for All Humanity」。宇宙を一部の専門家や宇宙企業だけの領域にとどめず、より多くの産業と人に開いていくというメッセージです。
会場で交わされていたのは、遠い将来の構想ばかりではありません。どこに資金を投じ、誰が顧客となり、どの国の企業と組んで事業をつくるのか。事業化を前提とした具体的な議論が目立ちました。
本連載の第1回では、2025年10月にオーストラリア・シドニーで開催された「IAC2025」を取り上げました。
当時、私が強く感じたのは「世界の速度」です。各国が宇宙を国家戦略の一部として捉え、政府、企業、大学が一体となって、中長期の投資を進めている。その規模と実行の速さを前に、日本との距離を意識せざるを得ませんでした。
それから約9カ月。SPACETIDE 2026で目にした景色は、少し違っていました。
「世界の側が、日本を見に来ている」。会場を歩き、海外の投資家や企業の話を聞くなかで、そう感じたのです。背景には、日本の宇宙政策が、研究開発を支援するだけでなく、政府調達と事業化までを見据える方向へ変わってきたことがあります。
初日のセッションでは、内閣府宇宙開発戦略推進事務局長の風木淳さんから、ロケット開発に加え、打ち上げ能力、射場、試験施設、量産設備、サプライチェーン、制度を一体で強化する方針が示されました。
JAXA理事長の山川宏さんは、政府が具体的な需要を示すことが、民間企業の投資判断を後押しすると話しました。アクセルスペースホールディングス代表取締役の中村友哉さんからも、政府が宇宙インフラの「顧客」になる意思を示したことの意義が語られました。政府が初期の安定顧客となり、民間企業の事業化や投資を後押しする、いわゆるアンカーテナンシーです。
「日本政府が資金を出す」だけではなく、「日本が宇宙サービスを買う市場になる」。この変化が、海外の投資家や企業が日本市場に目を向ける一因になっています。
株式会社2moonは、SPACETIDE 2026に協賛企業として参加しました
今回、特に印象に残ったのが、海外投資家によるパネルセッションです。
パネルには、米国のBalerion Space Ventures、トヨタ系のグロースファンドであるWoven Capital、シード期への投資に強いE2MC Ventures、ディープテック投資を手掛けるType One Venturesが登壇し、英国宇宙庁(UKSA)も議論に加わりました。日本の宇宙スタートアップをどう評価するのか。投資家たちの答えは、率直なものでした。
まず前提として、評価基準は、日本企業だからといって変わりません。Balerion Space Venturesのパートナーは、投資判断の基準として、Team、Technology、TAM(獲得可能な市場規模)の「3つのT」を挙げました。実行力のあるチームか、技術に競争力があるか、十分に大きな市場を狙っているかが問われます。米国でも、欧州でも、日本でも、見るべき点は変わりません。
グロース段階への投資を担うWoven Capitalは、より具体的な実績を重視します。実際にハードウェアを飛ばしたか。システムを軌道上へ展開したか。仮にミッションが予定どおり進まなかったとしても、次の開発につながるデータを得られたか。さらに、政府以外の商用顧客を獲得しているか。政府調達が10年、15年、20年という時間軸で続く見通しがあるか。
技術の将来性だけでなく、軌道上での実績や、商用顧客の獲得状況が問われます。日本企業であることが、評価を甘くする理由にはなりません。日本企業も、世界共通の投資基準で評価されるということです。
そのうえで、海外投資家は日本の強みを高く評価していました。まず挙げられたのが、長年の宇宙開発で蓄積してきた技術と実績です。「はやぶさ」に代表されるサンプルリターンミッション、大学が持つ知的財産、質の高い技術者層。こうした宇宙開発の蓄積は、海外投資家にとって明確な評価材料です。
製造コストも、日本の競争力の一つです。為替水準も含め、日本のエンジニアの人件費や製造コストは、米国西海岸などと比べて低い水準にあります。高い技術力と製造基盤を、欧米より抑えたコストで活用できることは、海外企業や投資家にとって大きな魅力です。
自動車や電機、精密機器などで培われてきた製造業の蓄積も評価されています。高い品質を保ちながら、大量生産をサプライチェーン全体で効率的に回す力は、衛星や宇宙機器の量産が進む時代に、これまで以上の価値を持ちます。
宇宙戦略基金や防衛予算の増加など、政府による資金面のコミットメントも、日本市場への関心を高めています。なかでも私が注目したのは、宇宙を本業としてこなかった大企業の参入です。
日本では、自動車、建設、素材、繊維、食品、物流、金融など、幅広い業界の企業が宇宙分野に関わり始めています。国内では珍しくなくなった動きですが、海外から見ると、宇宙を本業としない大企業がこれほど宇宙産業に関与する構造は決して一般的ではありません。
米国や欧州では、大企業の中で宇宙事業を立ち上げるよりも、宇宙に挑戦したい人材が独立し、スタートアップを立ち上げる例が比較的多く見られます。一方、日本では、大企業が社内に宇宙事業のチームをつくり、大学やスタートアップと共同で研究開発を進めるケースが少なくありません。
大企業は、スタートアップにとって顧客になり得ます。同時に、共同開発の相手であり、投資家にもなります。スタートアップが宇宙分野での実績、いわゆるヘリテージを積むうえでも、大企業との連携は有効です。
大企業、大学、スタートアップ、コンサルティング会社などが、それぞれの役割を持って一つのプロジェクトをつくる。私の経験上、こうした座組みは、技術開発から事業化までの道筋を描くうえで有効です。
私も企業の宇宙参入を支援するなかで、素材や加工、断熱、通信、ロボティクスなど、宇宙ではまだ使われていない優れた技術に数多く出会います。地上の産業で磨かれてきた技術の中には、「なぜ、これまで宇宙で使われてこなかったのだろう」と感じるものが少なくありません。
日本に足りないのは、技術ではありません。すでにある技術を宇宙の需要と結びつけ、事業に変える力です。
もう一つ印象に残ったのが、日本社会に根づく「宇宙好き」への評価です。SPACETIDE 2026では、漫画『宇宙兄弟』の作者である小山宙哉さんのセッションに、多くの参加者が集まりました。
写真=SpaceStep編集部
その光景を受けて、海外投資家の一人が、日本社会には宇宙への大きな支持があり、それは長期的には政府予算を支える力にもなると話しました。別の登壇者も、自分たちは宇宙を題材にした日本のアニメを見て育ったと応じました。
考えてみれば、日本には『鉄腕アトム』『銀河鉄道999』『宇宙戦艦ヤマト』『宇宙兄弟』など、宇宙を扱った作品が数多くあります。漫画やアニメを通じて宇宙に憧れた人の裾野は、研究者や技術者に限りません。
日本に暮らしていると、この文化の価値を意識する機会はあまりありません。しかし、宇宙に関心を持ち、その挑戦を応援する人が社会に広く存在していることは、日本の宇宙産業を支える無形の基盤です。
私は30年以上、宇宙の仕事に携わってきました。以前の宇宙開発は、一部の研究者や技術者が取り組む特殊な領域と見られることも少なくありませんでした。「国際宇宙ステーションは本当に必要なのか」「なぜ宇宙に予算を使うのか」と、その意義を説明し続けなければならない時代もありました。
その日本が、いま海外から「一般社会の支持がある国」として評価されている。技術や予算と並んで、文化までが日本の強みとして語られたことに、私は時代の変化を感じました。
日本の強みが評価される一方、海外投資家が共通して示した懸念もありました。日本市場しか見ていない企業には、投資しにくいということです。
Woven Capitalの登壇者は、日本市場だけを見ている企業よりも、はるかに大きな市場へアクセスできる米国企業の方が、投資対象として魅力的に映ると指摘しました。
宇宙ビジネスでは、研究開発にも実証にも多額の資金が必要です。その投資を回収し、企業として成長するには、日本市場だけでは規模が足りないケースが少なくありません。E2MC Venturesからも、日本を越えてグローバル企業になるという確信が持てなければ、大きな成長を前提とするベンチャー投資の対象にはならないという考えが示されました。
政府資金を活用すること自体が問題なのではありません。宇宙戦略基金や政府調達は、技術を開発し、初期需要を生み出すために欠かせないものです。しかし、それはゴールではなく、事業を立ち上げるための足場です。
政府調達を安定した収益基盤とし、その上に企業間取引による売上を積み上げる。さらに、国内で得た実績を海外展開につなげる。こうした事業設計がなければ、持続的な成長は望めません。
政府予算は、政権や政策の変化によって重点が変わる可能性があります。補助金を繰り返し得ていても、顧客や市場が広がっていなければ、投資家は事業として評価しません。投資家が見るのは、政府資金を獲得したかではなく、それを起点に顧客と市場をどこまで広げられるかです。
海外投資家から繰り返し聞かれたもう一つの言葉が、「スピード」です。日本の技術は緻密で、よく考え抜かれている。しかし、遅い。海外からは、依然としてそのように見られている面があります。
従来の宇宙ステーションや大型衛星、探査機の開発では、一つのプロジェクトに6年、7年という時間をかけることも珍しくありませんでした。高い信頼性が求められる宇宙開発では、慎重さは不可欠です。
しかし、スタートアップを中心に競争が進む現在の宇宙市場では、その時間軸のままでは戦えません。パネルでは、海外企業が月ごとに目標を設定し、期限直前まで試験を重ねながら、目標達成に徹底してこだわる例も紹介されました。こうした短いサイクルの積み重ねが、開発と実証の速度を生みます。
海外投資家は、緻密な技術を持ちながら市場投入に至っていない企業よりも、多少荒削りでも契約を獲得し、実際にシステムを展開している企業を評価します。
これは、日本の品質に対する考え方を否定しているわけではありません。品質を損なうことなく、開発、実証、市場投入のサイクルをいかに短くするか。日本企業には、その両立が求められています。
海外から日本への関心は、実際の企業行動にも表れています。2025年以降、海外の宇宙関連企業や機関による、日本拠点の開設や進出計画の発表が相次いでいます。
出典=各社プレスリリース、ESA、SSC Space、VAST Space、Axiom Space、ジェトロ、Venture Capital Journalをもとに株式会社2moonが作成
小型衛星の打ち上げインテグレーションを手掛けるドイツのExolaunch、地上局ネットワークを運営するスウェーデンのSSC Space、ブルガリアの小型衛星メーカーであるEnduroSat、米国の商業宇宙ステーション企業VastやAxiom Spaceなど、その事業領域は多岐にわたります。
欧州宇宙機関(ESA)も、アジア初となる事務所を東京に開設しました。ディープテック投資を手掛けるType One Venturesも、日本オフィスの開設を発表しています。なかには、営業機能にとどまらず、技術者や事業開発担当者を配置する企業、ペイロード統合設備を設ける企業、日本でのハードウェア開発や製造を視野に入れる企業もあります。
海外企業の一部は、日本を製品の販売先としてだけでなく、日本企業と組んで世界市場を目指すための拠点として位置づけ始めています。
EnduroSatの担当者は、日本企業と連携し、その海外展開を後押ししたいと語りました。欧州で培った量産能力を、適切な日本のパートナーとともに日本へ持ち込む可能性にも言及しています。
「日本に売る」から、「日本と組んで世界に売る」へ。海外企業の日本進出は、販売拠点の設置から、共同開発や共同展開を見据えたものへと広がっています。
海外企業は、日本の何を求めているのでしょうか。EnduroSatは、宇宙の持続可能性、革新的な推進系、軌道離脱技術について、日本には注目すべき技術が数多くあると指摘しました。日本がコストの低さだけで選ばれているわけではありません。海外企業は、日本企業が持つ固有の技術を具体的に探しています。
参入の障壁として語られたのも、規制や技術ではなく「時間」でした。日本では、契約や技術条件だけで、すぐに協業が決まるとは限りません。担当者同士が互いを知り、何を大切にしているのか、どこを目指しているのかを理解するまでに時間がかかります。
EnduroSatの担当者は、そのために必要なのは「忍耐」だと話しました。欧米と比べて意思決定や関係構築に時間を要する場合があっても、それは織り込み済みであり、時間をかけて長期の信頼関係を築く方を選ぶという考えです。
Exolaunch Japanの有坂市大郎さんも、宇宙業界固有の障壁に注目しすぎるべきではないと語りました。国境を越えて仕事をすれば、どの産業にも障壁はあります。海外企業は、日本の特殊性を必要以上に恐れてはいません。現地に人を置き、相手の文化を尊重しながら関係を築く企業が、すでに日本に拠点を構え始めています。
一方、日本企業も外へ動き始めています。アークエッジ・スペースの国際事業部エグゼクティブマネージャー 蔵本順さんは、SPACETIDEを含む1週間で、20件を超える海外プレイヤーとの商談を行ったと話しました。
インターステラテクノロジズ COOの熱田圭史さんからも、日本だけでは将来の打ち上げ需要をすべて満たすことは難しく、海外企業との協業が必要になるという考えが示されました。
海外企業が日本に入り、日本企業が海外へ出る。この双方向の動きが、SPACETIDE 2026の会場で感じた、これまでとの大きな違いでした。
では、日本企業は海外企業との連携を、どのように事業へつなげればよいのでしょうか。そこで知っておきたいのが、JAXAの「Co-Funded Business Promotion Framework(CBPF/協調による事業推進枠組み)」です。
本連載の第3回「欧州の宇宙戦略とルクセンブルクが築くエコシステム」でも触れましたが、今回はもう少し具体的に説明します。
出典=JAXA(株式会社2moon作成資料より引用)
宇宙戦略基金の支援対象は、日本法に基づいて設立され、日本国内に研究開発拠点を持つ組織です。海外企業が、日本の基金から直接資金を受け取ることはできません。
海外企業は、日本企業とともに「協力機関」としてプロジェクトへ参加できますが、宇宙戦略基金から資金は受け取れません。必要な資金は、自国側の制度から調達することになります。この両者をつなぐのがCBPFです。
日本企業は、宇宙戦略基金やJAXAの調達・共同研究など、日本側の制度を通じて支援を受けます。一方、海外企業は自国側の支援制度を活用し、両者で一つの共同事業を進めます。CBPFは、新しい基金をつくる制度ではありません。両国の宇宙機関が既存の支援制度について情報を共有し、それぞれの判断で企業を支援することで、国境を越えた共同事業を動かしやすくする枠組みです。
企業同士が協業先を探るPhase 1から、MOU(覚書)を締結するPhase 2、一方の宇宙機関が事業を支援するPhase 3、双方が支援するPhase 4まで、関係の深さに応じた段階が設けられています。
すべての案件がPhase 4を目指す必要はありません。企業同士の関係や事業の成熟度に合わせて、段階的に進められます。
日英間では、CBPFが目指す国際協調型の支援に通じる先行事例もあります。軌道上テレメトリ中継サービス「InRange」では、英国宇宙庁のInternational Bilateral Fundが英国企業を支援し、日本側ではJAXAの契約に基づき三菱重工業がH3ロケット向けの開発を担っています。
CBPFは英国、フランスとの連携が具体化しており、シンガポールでも活用に向けた動きが進んでいます。こうした枠組みは、日本企業にとって有力な選択肢です。ただし、制度の名称を知り、応募書類に海外展開と記すだけでは十分ではありません。英国企業と組むのであれば、英国政府が宇宙産業のどの分野を重視し、どのような資金制度を設けているのかを理解する必要があります。
日本政府の方針だけでなく、相手国の政策も読む。両国に共通する課題を見つけ、共同開発の先にどの市場を狙うのかまで描く。そこまで具体化してこそ、国際共同事業としての実効性が生まれます。
セッションでは、海外企業が日本市場に入る際の実務的な助言も語られました。現地のスタッフを置くこと。忍耐を持つこと。そして、政府から何かが来るのを待たないことです。
政府は市場を育てるための制度をつくります。しかし、その制度を使って顧客を獲得し、事業を前へ進めるのは民間企業です。日本企業から海外企業に向けては、「会社を知る前に、まず個人を知ってほしい」という言葉もありました。
会議室を離れ、時には食事をともにしながら率直に話すことも、相互理解を深める一つの方法です。本質は、相手が何を大切にし、どこを目指しているのかを知ることにあります。制度と資金だけで、国際連携は動きません。最後に事業を動かすのは、人と人との信頼です。
SPACETIDEのような国際カンファレンスも、講演を聞いて帰るだけでは、十分に使い切ったとは言えません。自社の技術と相手の課題がどこで重なり、どの市場をともに狙えるのかを確かめ、次の打ち合わせへつなげる。国際カンファレンスは、共同事業の入口として使うべき場所です。
連載「世界基準で読む宇宙ビジネス」はいかがだったでしょうか。
第1回のIAC2025から始まり、米中の宇宙覇権と台湾の台頭、欧州とルクセンブルクの宇宙戦略、アフリカ宇宙産業の現在地、NASAの月面基地構想と日本のロボティクス、そしてSPACETIDE 2026まで、全6回にわたって世界の動きを見てきました。
地域もテーマも異なりますが、そこから浮かび上がった論点は二つです。
一つは、日本に足りないのは技術ではないということです。日本には、「はやぶさ」をはじめとする宇宙開発の実績があります。大学には優れた研究成果があり、企業には、素材、加工、ロボティクス、精密機器など、まだ宇宙で十分に活用されていない技術が数多くあります。異業種の大企業が宇宙に参入し、大学やスタートアップと連携する基盤もあります。漫画やアニメを通じて育まれてきた、宇宙を応援する文化もあります。海外の投資家や企業は、その価値をすでに評価しています。
もう一つは、日本に足りないのは、外へ出る意思決定の速さだということです。日本市場だけを見る企業には投資しにくい。緻密でも動きの遅い企業より、多少荒削りでも契約を獲得し、実際にシステムを動かしている企業を評価する。海外投資家の発言は、世界の資本市場が企業をどのように見ているのかを端的に示していました。
これは、日本の品質を否定する言葉ではありません。世界の資本市場が、企業をどのように評価しているかを示す言葉です。なかでも印象に残ったのは、日本社会に根づく宇宙への関心が、海外から強みとして評価されたことです。宇宙開発が「理解されにくい仕事」だった時代を知る私にとって、これは決して小さな変化ではありません。
日本の宇宙産業には、いま確かな追い風が吹いています。政府は宇宙戦略基金による支援に加え、自ら顧客となって需要を生み出す姿勢も示しています。海外の企業や機関も、日本に拠点を構え始めています。CBPFのように、国境を越えた共同事業を支援する仕組みも動き始めました。
材料は、ほぼ揃ったと言ってよいでしょう。あとは、私たちが動くかどうかです。SPACETIDEで、Exolaunch Japanの有坂市大郎さんが語った言葉が、いまも耳に残っています。
政府から何かが来るのを待つのではなく、自ら事業を前へ進めるべきだ――有坂さんの発言を、私はそのように受け止めました。
海外から日本へ向けられている関心も、製造コストの優位性も、いつまでも続くとは限りません。日本市場への参入が進めば、競争も確実に激しくなります。いま日本にある優位は、期限付きの優位です。世界基準で宇宙ビジネスを読み解くほど、日本がいま取るべき行動は明確になります。
6回にわたり、本連載をお読みいただき、ありがとうございました。次に皆さまとお会いするときには、日本企業が世界のどこかで新たな契約を獲得した――そんなニュースをご報告できればと思います。