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2026.09.16

曲がる全固体電池で、宇宙機の隙間を活用

小型人工衛星や宇宙探査機、さらには将来の宇宙服開発において、常に設計者を悩ませてきたのが、厳格に制限された体積と質量の中でいかに搭載機能を最大化するかという問題だ。従来の電池システムはセルの形状や固定構造に制約が多く、筐体内部の曲面や細かな隙間を活用しきれず、未活用空間として残ってしまうジレンマが存在していた。

こうした宇宙機の空間的な制約を乗り越えるべく、未活用空間そのものを電源へと変える新たなアプローチが動き出した。2026年7月、株式会社ケミトックスは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が推進する宇宙戦略基金事業において「フレキシブル全固体電池による自在設置型宇宙電源システムの開発」が採択されたと発表した。曲がる電池技術を活かした柔軟な電源設計が、宇宙システムの構造そのものを根本から進化させようとしている。(文=SpaceStep編集部)

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曲面配置と高安全性を両立。宇宙機の未活用空間へ

(引用元:PR TIMES

第三者試験評価機関として50年以上の歴史を持つケミトックスが提案した本技術開発課題は、JAXAの宇宙戦略基金事業「SX中核領域発展研究(SX-ARK)」における「熱とデバイス」領域で採択されたものだ。

本研究の核となるのは、高い安全性や広い動作温度範囲といった特長を持つ全固体電池に柔軟性を付加した「フレキシブル全固体電池」の開発である。従来の硬いセル形状とは異なり、電池自体を曲面や細部空間に沿わせて配置できるため、小型人工衛星の筐体内部に生じていた隙間や曲面などの未活用領域を電源として活用できるようになる。


(引用元:PR TIMES

これにより、宇宙機の設計自由度が大幅に拡大するだけでなく、限られた容積の中で観測機器をはじめとするペイロードの搭載量を増加させることが可能になる。さらに同社は、長年培ってきた太陽電池とリチウムイオン電池の評価知見を活かし、将来的な構想としてフレキシブル全固体電池とペロブスカイト太陽電池を融合させた、曲がる“発電×蓄電”複合デバイスの開発も掲げている。このしなやかな電源の実用化は、小型衛星だけでなく、人体の動きに合わせた次世代の宇宙服などへの展開も見据えたものだ。


(引用元:PR TIMES

四角い電池の制約を脱する。“曲がる電源”が拓く新設計

ケミトックスによる開発課題の採択が示唆するのは、宇宙機開発における電源の役割が「内部に収容する個別の部品」から「構造や空間と一体化する機能」へと進化し始めたという事実である。

これまでの宇宙機設計では、四角い電池のサイズに合わせて内部レイアウトを決定せざるを得ず、どうしても活用できないデッドスペースが発生していた。しかし、電源自体が自在に変形し、機体の曲面や隙間に沿って配置できるようになれば、機体設計の自由度は飛躍的に高まる。体積や質量の制限が厳しい小型衛星において、デッドスペースを電源化できる技術は、ミッションの成功率や観測能力を底上げする強力な武器となるだろう。

また、本取り組みが提示する価値は、将来の有人宇宙探査や月面活動への広がりにある。ペロブスカイト太陽電池と全固体電池が一体となった柔軟な電源システムは、人体の複雑な動きに追従する次世代宇宙服の電源としても適しており、宇宙空間での活動領域を大きく広げる可能性を秘めている。

宇宙ビジネスが加速する中で、電源技術の革新はミッションの可能性を左右する核心となる。ケミトックスが提示したフレキシブル電源の構想は、宇宙機の設計思想を塗り替え、次世代の宇宙開発を支えるための重要な推進力となっていくはずだ。

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