海外でエネルギーや産業インフラ向けのプラント事業を手掛ける日揮グローバルの中で、宇宙領域に特化した「宇宙エンジニア™」。皆さんご寄稿のもと、日本が宇宙領域において抱えている課題や挑戦を発信する当連載。
今回は、宇宙開発とプレゼンテーション教育を融合した新たな人材育成の取り組み――話し方・プレゼン教育を手掛けるHANASO Speech Academyとの異分野連携に注目。
月面開発は、エンジニアだけで進めるものではありません。未来の社会を構想し、その価値を人に伝え、多様な立場の人々を巻き込む力もまた、宇宙開発を支える重要な要素です。宇宙エンジニア™と現役アナウンサーがそれぞれの専門性を持ち寄り、子どもたちが宇宙を「自分ごと」として考え、伝える力を育む新しい教育プログラムが生まれました。異分野の共創から広がる宇宙教育の可能性についてお話いただきます。(リード=SpaceStep編集部、本文=日揮グローバル 宮下俊一さん)
今回の宇宙エンジニアは

日揮グローバル株式会社 Engineering DX推進室
宮下 俊一さん
1998年入社。サウジアラビア・オマーン・マレーシア・ベトナムなど多くの海外プロジェクトにてOil & GasプラントのEngineeringに従事。2018年よりIT Grand Plan2030策定・推進メンバー、2020年から月面プラント開発責任者を務め、2024年からEngineering DX推進室の室長。Engineering DXを実現した未来の姿として、Lunar Smart Community® (Lumarnity®)を提唱し、宇宙エンジニアTMとして開発管掌・プロジェクトディレクターを務める。
きっかけは大阪・関西万博のイベント「TEAM EXPO 2025 MEETING」でした。「TEAM EXPO 2025」は、大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を実現(またはSDGsの達成に貢献)するために行う具体的な活動のことです。多様な人たちがチームを組み、多彩な活動による社会課題の解決、 その先の未来に挑む、みんながつくる参加型プログラムでした。その中で各社の取組みをプレゼンする機会があり、HANASO LABの小林 恵子さんと宇宙エンジニア™がお互いの活動を知り、コラボをする事で話が進みました。

一般社団法人HANASO Speech Academy代表理事
株式会社COTOLAB 代表取締役
小林 恵子さん
TBS系新潟放送、NHKなどでアナウンサーとして20年以上のキャリアを築き、情報を的確に捉えて伝える「話す力」の重要性を痛感。 2019年一般社団法人HANASO Speech Academyを設立。小中学生向けに独自のプレゼン大会「キッズ模擬国連」や月面開発に触れる機会を創出し、未来の宇宙開発を担い、その魅力を語れる人材の育成に力を注いでいる。
⼀般社団法⼈ HANASO Speech Academy (本部:東京⽬黒区)は、⼩‧中学⽣によるプレゼン⼤会「キッズ模擬国連」を 開催しています。この大会はスピーチ‧プレゼン教室「HANASO LAB (ハナソラボ)」に通う⼦どもたち約 40 ⼈と⼀般公募で選ばれた⼦どもたちが登場。3 ⽉ 20 ⽇の世界幸福デーに国連から発表される世界幸福度ランキングを⼦どもたちなりに考察し、⼀つの国をもっと幸せにするにはどうしたらいいかというアイデアを、それぞれオリジナリティあふれる表現で披露していきます。
開催 4 回⽬となる2025年3月22日、キッズ模擬国連にLumarnity®グッズの賞品提供で協力することになりました。折角の機会なので、どんな事をしているのかと気軽に、ほとんど下調べもせず、見学に行きました。
会場に到着し、見学する場所を探していると、何やらバタバタしている状態でした。話を聞くと、審査員の1人が当日に参加できなくなってしまったとのこと。そこにふらっと現れた宇宙エンジニア™に白羽の矢が当たり、審査員役の代打を急遽務めることになり、表彰式にまで出ることになり…、と言った流れで本格的なコラボが始まりました。
急遽代打を務めた、キッズ模擬国連の表彰式
HANASO Speech Academyは、今まで誰も教えてくれなかった「上手な話し方」の秘訣を、キャリアを積んだアナウンサーが伝授する話し方教室の企画・運営を手掛けています。オリジナルのカリキュラムでプレゼン力・スピーチ力を鍛え、教育改革の目玉となる「表現力」の向上に貢献してきました。スピーチやプレゼンをもっと楽しみ、もっと自信を持ってもらいたい。そんな想いからスピーチ‧プレゼン教室「HANASO LAB」は生まれました。
話すチカラを磨くことで、人の行動を変え、世界を動かせるように!スピーチやプレゼンの力は仕事をする上で必須です。でも、これまで教えてもらったことがない……。と悩みを抱えた方々へアナウンサーの表現力を伝授し、徹底的にサポートしています。
「話す力」の授業風景
一方、日揮グローバルは宇宙開発に取り組む中、月面での資源循環型インフラとスマートコミュニティの概念を融合させたLumarnity®構想を提唱しています。この開発発信を通じて、実は技術以外の部分にも価値があり、挑戦するエンジニアの姿や未来の月の話に大きな反響がありました。そこで、宇宙エンジニア™が届ける「Lumarnity® Experience」として、未来の月はどうなっているのか学ぶ新体験の提供を始めたところでした。
当初は宇宙エンジニア™の講義とVRやプログラミングの理系向け教育活動を展開していました。しかしHANASO Speech Academyのアナウンサーと、日揮グローバルの宇宙エンジニア™が理系と文系を融合した新しいコラボレーションの可能性を見出し、子供たちが未来と宇宙開発を自分事化しながら学ぶ新しい次世代プレゼン教育が出来ました。今までは直接リーチできない分野間のコラボであり、宇宙開発の新しい利用方法が生まれた瞬間です。

「HANASO LAB」のレッスンの中で、実際の製品を使用し、子どもたちの目線で30秒CMを制作するプログラムがあります。丁寧に製品を理解・観察し、子供たちが商品の魅力を伝えるCMのシナリオ・演技・撮影を通じてプレゼンテーションを学ぶ実践的ワークショップです。
プロフェッショナルサービスを提供しているエンジニアリング会社を取り上げる事は難しいですが、別のコラボで誕生したノジマプログラミング教材(第6回記事参照)を採用し、そのCM制作を題材とすることにしました。
月面開発がテーマのノジマプログラミング教材のCMは、大人が考えても難題ですが、魅力的なキャッチコピーとともに、オリジナリティーあふれるたくさんのCMが出来上がりました。ノジマ本社で「CM制作発表会」が実施され、元気なCM賞、キャッチコピー賞、アイデア賞、優秀賞が表彰されました。

「月面開発プログラミング教材」の CM制作発表会 (表彰式)
このレッスンでは、最優秀作品をイッツコムで放送することも含まれています。HANASO LABキッズニュースとして、キッズがアナウンサーを務めます。関係者として撮影に同席させてもらいましたが、3名のキッズアナウンサーの見事な仕事ぶりに感動しました。

CM撮影風景
SONY製の大きなカメラのプレッシャーのみならず、高すぎる椅子に座るところから一苦労だったり、お辞儀をした際にちょっと椅子がぐらついたりと、色々な困難を乗り越え、素敵な笑顔でプログラミング教材の魅力を伝えてくれました。2026年2月14日(土)14時45分〜14時50分にイッツコムで放送され、Youtube動画で公開されているので、ぜひご覧ください。
イッツコム放映動画HANASO LABキッズニュース(2026/02/14)
今回は、「Enhancing planetary health」をパーパスに月面開発を手掛ける宇宙エンジニア™と、「ハキハキプレゼン、広がる未来!」をコンセプトにプレゼン教室を手掛ける現役アナウンサーがタッグを組み、子供たちへの体験教育を共創した事例でした。自分が子供の頃にはこんな機会は無く。羨ましいなと思える、次世代の子供に向けた斬新な教育プログラムになりました。(つづく)