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2026.04.23

ノジマ×宇宙 教材づくりへの思い【連載】月へ挑む、宇宙エンジニアたち (第6回)

海外でエネルギーや産業インフラ向けのプラント事業を手掛ける日揮グローバルの中で、宇宙領域に特化した「宇宙エンジニア™」。皆さんご寄稿のもと、日本が宇宙領域において抱えている課題や挑戦を発信する当連載。

第6回は、家電量販店ノジマとの連携。イベントでの出会いから、子どもたちに向けた学習教材を制作することになった宇宙エンジニアの皆さん。次世代教育にも力を入れる両社の軌跡をたどります。(リード=SpaceStep編集部、本文=日揮グローバル 宮下俊一さん)

今回の宇宙エンジニアは


日揮グローバル株式会社 
Engineering DX推進室
宮下 俊一さん

1998年入社。サウジアラビア・オマーン・マレーシア・ベトナムなど多くの海外プロジェクトにてOil & GasプラントのEngineeringに従事。2018年よりIT Grand Plan2030策定・推進メンバー、2020年から月面プラント開発責任者を務め、2024年からEngineering DX推進室の室長。Engineering DXを実現した未来の姿として、Lunar Smart Community® (Lumarnity®)を提唱し、宇宙エンジニア™として開発管掌・プロジェクトディレクターを務める。

これまで当連載では、普段触れる機会のない宇宙開発の内容や国際会議でのレポートの発信を開始しました。宇宙を身近にする1st Stepではあるものの、『SpaceStep』が届けたい「宇宙ビジネスを読者一人ひとりの“自分ごと”として捉えていただけるような記事」を鑑みると、より身近に接する事ができるテーマの発信も必要であると考えました。

ついては、当初の2大テーマ「最先端の宇宙(月面開発)」、「世界の動向(学会)」、に「社会との繋がり(コラボ)」を加えて、宇宙エンジニア™の3本柱でお届けしています。今回はコラボ回として過去実施した宇宙関連イベントの様子を紹介します。

府中で宇宙を体験中!

2024年2月10日、「月の世界を体験!月面プラント旅行 ~月面スマートコミュニティ『Lumarnity®』~」の講演。デジタル家電専門店ノジマの社員さんが見に来ていました。

宇宙の店での講演

実はノジマが運営するショッピングセンター・ミッテン府中にて、宇宙イベント「府中で宇宙」を計画しており、そこで Lumarnity®の体験提供に協力して欲しいとの打診でした。

「未来の月の疑似体験に感動し、是非この体験価値をミッテン府中でも提供したい」との熱いオファーに即断即決で快諾し、Lumarnity®360とVR体験を提供する事で合意しました。

ノジマは日本を代表する家電量販店であり、横浜DeNAベイスターズのスポンサーとして良く知っていました。このコラボを機会にノジマについて調べると、「宇宙を身近に感じられるまち」こと神奈川県相模原市で創業した会社であり、宇宙をテーマにプログラミング講座のイベントや教材を販売している事を知りました。そこで、イベント協力以外にもシナジー効果を出せるのでは?と想定。

そこでノジマの社員さんに紹介いただいたのが、同社が運営するパソコン・スマホ教室「デジ・ライフスクール」事業部の皆さんでした。

ノジマが描く“次世代人材育成”への思い

デジ・ライフスクール教室は、地域の情報格差解消とITスキルの底上げに貢献する、ノジマの取り組み。幅広い年齢層に対応し、子どもたちにも「挑戦すること」「失敗から学ぶこと」「自ら考え行動すること」の 大切さを伝える活動を推進しています。

ノジマ ロボットプログラミング学習風景

具体的には、幼児から小学生や教職員に向けたPC・ロボットプログラミング学習機会の創出、自宅学習用教材セットの発売など。子どもの将来を真剣に考える方々に喜ばれてきました。また神奈川県相模原市発祥の企業ということから、JAXAとの交流もあり、2020年から宇宙を教育に取り込んで実績を積み重ねています。

ノジマ宇宙関連の協働活動事例

宇宙開発をテーマとした学習機会を提供し、未来の科学技術を担う子どもたちの創造力と探究心を育む取り組みを継続的に実施しています。

幼少期から日常生活の中にある場所や馴染みのあるツールを使い宇宙や最新の科学技術に親しむ環境で楽しく学ぶことは、子どもの探求心を深化させ継続学習の原動力を育むことに寄与しています。

       

ノジマ ロボットプログラミングイベント風景

プログラミング教材「月面シリーズ」で宇宙への関心を育む

2025年2月3日、デジ・ライフスクール ロボットプログラミング教材チームとの打ち合わせを経て、最初の打合せから11ヶ月の短期間で、プログラミング教材 (図4)が販売されました。日揮グローバルが構想するLumarnity®を舞台に、人が月面で長期滞在できる基地に必要なエネルギー循環や、SDGsについて現役のエンジニアの体験談を元にして学べるテキスト教材などを制作。

他にもレゴブロックを使って、生活、理科、科学などの課題を解決するレゴ®エデュケーションの教材を使用したロボットプログラミング教材や、月面開発に必要な要素を取り込んだカードゲームがセットになっており、楽しく試行錯誤しながら子どもたちの論理的思考力を鍛える教材が完成しました。

ノジマプログラミング教材 (月面シリーズ)

論理的思考力を鍛える学習教材として人気が高い「レゴ®ロボット、プログラミング、カードゲーム」の3つと、「宇宙」の要素を組み合わせたことで、子どもの知的好奇心を刺激し、科学技術・プログラミング・SDGsの各分野への主体的な学びに繋げる狙いがあります。また、本教材の学習内容で、宇宙エンジニア™の拘りは以下の二点です。

①:現役のエンジニアから学ぶ「エネルギーの重要性とエンジニアの仕事」

私たちの生活に欠かせない電気やガスなどのエネルギーに関する基本知識や、それらの資源を作り出す工場設備の建設を手掛けるエンジニアのお仕事内容、地球にやさしいサステナブルな社会実現に向けた取り組み事例などを、オリジナルテキストで学びます。

Lumarnity®構想に関わる、化学工学、機械工学、航空宇宙工学、土木・建築工学、情報工学、電気工学の各分野出身のエンジニアの語りは臨場感にあふれ、エンジニアという仕事への理解を深めると共に子どもたちの将来の職業選択の幅を拡げます。

また、難しい問題に直面したときの考え方や問題解決へのアプローチ方法、小学校から高校の学生時期における学びの重要性にも触れており、すべての子どもたちに読んでいただきたい充実の内容です。

②:遊びながら学ぶ「月面での循環型社会」

月面プラントでのエネルギー生成や食糧の確保について、効率よくよりたくさんのエネルギーや食糧を生成するには?という問題解決を目指し、子どもがロボットをプログラミングで動かしながら、自分の頭で考えてミッションをクリアしていきます。カードゲームの要素は、複数ある条件や戦略を駆使し、集中力を長時間維持するうえで非常に有効です。

「宇宙を自分ごとに」──次世代エンジニア育成に向けた実装フェーズへ

これまでの連載では、日揮グローバルが描く月面スマートコミュニティの未来像や、国際宇宙会議(IAC)での最前線をお伝えしてきました。これらは、私たちが目指す「未来の大きなゴール」です。

しかし、その未来を実現し、更に持続発展させていくためには、次世代を担う子どもたちが宇宙を「自分ごと」として捉え、挑戦し続けるための土壌が欠かせません。

今回ご紹介したノジマ プログラミング教材は、その土壌づくりのための大切な一歩です。本物の現役エンジニアの臨場感あふれる言葉と、楽しくかつ夢中になりながら試行錯誤するプログラミング学習を組み合わせることで、子どもたちにとっての宇宙は「見上げるもの」から「自分の手で創り出すもの」へと変わります。

宇宙エンジニア™の役割は、高度なプラントを設計することだけではありません。未来を生きる子どもたちへ日常の学びを通じて、変化の激しい時代を生き抜く「探究心の原動力」を育むことも、未来を創るエンジニアとしての重要な使命だと考えています。

この教材に触れた子どもたちの中から、いつか共に月面で働く仲間が生まれることを願って止みません。(つづく)