山あいに広がる農地に雑草が生い茂り、人影が途絶えていく光景は、もはや珍しいものではなくなった。農村コミュニティで過疎化と高齢化が急速に進んでいる。耕作放棄地の拡大は収穫量の減少にとどまらず、鳥獣被害の深刻化や土砂災害を招き、集落の存続を揺るがす。国や自治体の支援制度は存在するものの、法律の画一的な基準や古い統計、自己申告に依存するあまり、真に過酷な環境にありながら支援から取り残された集落は少なくない。人手不足に喘ぐ自治体において、見落とされた農地を客観的に特定し、いかに手を差し伸べられるかは、切実な課題であった。ここに「制度の空白」がある。
空白を埋めるべく、衛星データを活用した新たな試みが動き出している。2026年9月、LAND INSIGHT株式会社は栃木県内18市町を対象に、農地維持に向けた分析ツールの提供を開始。宇宙からの眼が、地方の農地を守る新たな基盤を築こうとしている。(文=SpaceStep編集部)
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(引用元:PR TIMES)
LAND INSIGHTが栃木県内で開始した事業は、衛星データや地形データをAIで分析し、中山間地域支援事業の交付対象となり得る農地を可視化する取り組みだ。
条件不利地域を支える「中山間地域等直接支払制度」は、法律で定められたエリアが中心となっている。そのため、実質的に厳しい営農環境にありながらも、国の基準から外れて交付を受けられていない集落が存在してきた。県が独自に支援対象を広げる「特認地域」の指定制度もあるが、直近5〜10年の土地利用や耕作実態を裏づける最新データが不足していたのが実情だ。

(引用元:PR TIMES)
この課題に対し、同社は栃木県内18市町を対象に、各種統計を「旧市町村単位」まで遡って集計し、県職員自身が「どの集落が条件不利な状況にあるか」を確認・比較できるツールを構築。さらに最大の強みとなるのが、衛星データとAIを用いた過去約20年間の土地利用の変化の実測だ。従来の調査が自己申告に依存していたことで生じていた統計と実態のギャップを宇宙からのデータで補正し、地形データや地理情報を掛け合わせることで、対象地域の5年後・10年後の営農環境や耕作放棄の発生予測を算定する。

(引用元:PR TIMES)
こうした高精度な分析モデルを成立させている背景には、同社が同県内で積み重ねてきた確かな実績がある。前年度には県内全25市町村を対象に、70万筆もの農地区画のデータ化に関する業務を受注していた。そこで培われたデータ整理の経験や地域特性の知見がダイレクトに活かされているからこそ、机上の推計にとどまらない、現場の実態に即した分析基盤の構築が可能となっている。
本事業の展開が示唆するのは、衛星データの活用領域が単なる環境観測や作況調査にとどまらず、行政支援の「公平な分配を支える客観的エビデンス」へと進化したという事実である。
これまで中山間地域の農業現場では、どの農地で耕作が続き、どこが荒廃しているかといった、実態の把握が困難を極めていた。その環境下において、実際に測定した約20年分もの土地利用変化のデータは、人手不足に悩む行政の負担を軽減するとともに、声の届きにくかった限界集落に対しても客観的な根拠に基づいて支援を届ける基盤となるだろう。
また、このデータ基盤は「守りの維持管理」にとどまらず、「攻めの地域経営」を切り拓く可能性も秘めている。衛星データと経営構造を組み合せた解析を行うことで、限られた人員をどの農地に集中投下すべきか、どのような作目やビジネスモデルが成立し得るかといった。前向きな議論も可能になりうる。
全国で小規模集落化が進む中、農村インフラを維持するためには、科学的なアプローチが欠かせない。LAND INSIGHTと栃木県が築いたモデルは、全国の中山間地域が直面する課題を乗り越えるための道標となるはずだ。
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