宇宙から土地を探す。月面に人が暮らす。かつては夢物語にも思えたことが、今、現実のビジネスや研究開発のテーマになっている。2026年11月5日(木)・6日(金)、東京大学の安田講堂で「宇宙×不動産カンファレンス2026(SRC2026)」が開催される。主催は「宇宙×不動産カンファレンス実行委員会」で、衛星データとAIを活用した不動産事業を展開する株式会社WHEREが運営を担う。
昨年の初開催で好評を博し、今回は規模を拡大して実施する。宇宙ビジネスを身近にするWebメディア『SpaceStep』も、その趣旨に賛同し、メディアパートナーとして参画する。2回目を迎える今年は、元JAXA宇宙飛行士による基調講演をはじめ、衛星データを活用した不動産取引の実例、月面の土地利用を巡る議論、大学発スタートアップのピッチ大会など、さらに多彩なプログラムがそろう。WHERE代表取締役CEOの阿久津岳生さんに開催の狙いを聞くとともに、注目のプログラムを紹介する。(文=SpaceStep編集部)
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2025年12月、東京・銀座の時事通信ホールで初開催された「宇宙×不動産カンファレンス(SRC2025)」。宇宙と不動産という異なる産業を結びつける試みは、初年度から大きな関心を集めた。
初開催ながら1,350名が申し込み、28名が登壇。計15のセッションが行われ、参加者アンケートでは94.9%が「次回も参加したい」と回答した。元JAXA宇宙飛行士の野口聡一さんによる基調講演や、小説『地面師たち』の著者・新庄耕さんと漫画『正直不動産』の原案者・夏原武さんによる特別セッションなど、多彩なプログラムが好評を博した。
そして今年、SRCは開催期間を2日間に拡大し、東京大学の安田講堂へと会場を移す。昨年の反響を踏まえ、宇宙技術の可能性を議論するだけでなく、具体的な事業や連携を生み出すことにも力を入れる。

SRC2026が掲げるテーマは「宇宙ビジネスと不動産ビジネスの新たな融合 ―5000年続いた不動産産業を、宇宙とAIで変革する―」。
土地の取引に関する記録は、古代メソポタミア文明の時代にまでさかのぼる。土地の所有や利用のあり方は時代とともに変化してきたが、不動産が人々の暮らしと経済活動を支えてきたことに変わりはない。その一方、土地の調査や取引には、現在も人手や経験に頼る部分が少なくない。例えば、不動産開発に適した土地を探す場合、担当者が現地を歩き、所有者や周辺環境、利用条件を調べるなど、多くの時間と労力がかかる。
そこに新たな可能性をもたらしているのが、人工衛星による地球観測とAIによるデータ解析だ。衛星画像を活用すれば、広い範囲に点在する土地や建物の状況を俯瞰できる。AIを組み合わせることで、従来は見つけにくかった不動産候補を抽出し、開発の可能性を検討することもできる。
SRCを運営するWHEREは、衛星データとAIを不動産ビジネスに活用するJAXA発スタートアップだ。同社が開発する不動産探索AI『WHERE』は、市場に出回る前の土地や建物の候補を見つけることを支援する。さらに、所有者へのアプローチなど、不動産取引に向けた業務も支援している。WHEREの取り組みは、宇宙技術が不動産業界の実務をどう変え得るのかを考えるうえで、一つの具体例となる。
今年のSRCでは「宇宙技術の民間利用の促進」「新たな不動産市場の開拓」「産官学の共創による産業エコシステムの強化」を3つの柱に掲げる。宇宙技術を開発する企業と、その技術を必要とする企業が出会い、新たな事業を生み出す。そうした機会を増やすことも、SRCが目指すところだ。
初開催で得た手応えを、今年はどのような成果につなげたいのか。阿久津さんは、次のように語る。
「5000年続いた不動産産業を、宇宙とAIで変革する。不動産は人類の歴史とともに発展してきた巨大な産業ですが、今なお人脈や経験に頼る部分が多く残っています。私たちは、そこに宇宙技術とAIを掛け合わせることで、これまで見つけられなかった不動産の価値を発掘し、新たな取引を生み出そうとしています。私たちWHEREが目指しているのは、既存市場のシェアを奪うことではなく、『宇宙×不動産』という新しい市場そのものをつくることです。そのためには、技術やビジネスの可能性を実証し、世の中に広く知ってもらい、多くの企業や研究者が参入する環境をつくることが重要です。SRC2026は、宇宙ビジネスと不動産ビジネスの新たな融合を加速させる場です。宇宙、不動産、建設、金融など、さまざまな分野の知見や技術が交わることで、これまでにない事業や連携が生まれると信じています。このカンファレンスを、新たな市場が動き出すきっかけにしていきたいと考えています」
SRC2026の見どころの一つが、元JAXA宇宙飛行士で、現在は杏林大学医学部特任教授を務める古川聡さんによる基調講演「宇宙の視点 新たな可能性」だ。
古川さんは2011年と2023~2024年の2度にわたり国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在し、累計366日を超える宇宙滞在を経験している。昨年の野口聡一さんに続き、今年も宇宙飛行経験者による講演が実現する。宇宙から地球を見つめ、長期滞在中には数々の実験や研究に携わってきた古川さん。その経験を通じて、地球や人類の未来をどう捉えているのか。宇宙での活動を実際に経験したからこそ語れる話に期待が高まる。
また、国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の岩本裕之さんは、ビジョンスピーチ「暮らしの中の宇宙ビジネス ~私たちの生活を支える宇宙利用~」に登壇する。

衛星通信や衛星測位、地球観測など、宇宙技術はすでに私たちの生活のさまざまな場面を支えている。地図アプリや物流、防災、農業なども、その恩恵を受ける分野の一つだ。
宇宙ビジネスの裾野は、ロケットや人工衛星の開発にとどまらない。地上のさまざまな産業が宇宙技術を利用することで、どのような市場が生まれるのか。岩本さんの講演では、私たちの仕事や暮らしと宇宙産業のつながりを考えたい。
宇宙技術を地上でどう活用するかという議論がある一方、人類の活動領域が宇宙へ広がることによって、新たなビジネスが生まれる可能性もある。それを考えるうえで注目したいのが、「極限環境が拓く、宇宙居住の未来」だ。
登壇するのは、宇宙投資に携わる大貫美鈴さんと、鹿島建設の大野琢也さん。

月や火星など、地球とは異なる環境で人が生活するためには、どのような技術や設備が必要になるのか。居住施設の建設はもちろん、エネルギーや水の確保、資源の再利用など、検討すべき課題は多い。
月面で建物をつくる場合、地球から建設資材を運ぶだけでも大きな費用がかかる。そのため、現地の資源を利用する技術や、遠隔操作による施工など、地上とは異なる条件への対応が求められる。鹿島建設の取り組みも踏まえながら、宇宙居住の実現に向けた技術的な課題や、建設業界が果たす役割を考える。
衛星データによって地上の不動産ビジネスを変える一方、月面では建設やインフラ整備の新たな技術が求められる。地上と宇宙、双方の視点から建設の未来を考えられることも、このセッションの面白さだ。
不動産業界の関係者にとって見逃せないのが、衛星データとAIによる不動産取引の最新事例だ。
「宇宙データが動かすリアルな不動産取引〜最新取引事例を読み解く〜」では、増田総合研究所代表取締役社長でWHERE顧問の増田文彦さんと、WHERE取締役COOの西村仁さんが登壇する。
WHERE取締役COOの西村仁さんの過去のインタビューはこちら
衛星データを使って土地を見つけることと、実際に不動産取引を成立させることは別の話だ。土地の権利関係や用途規制の確認、所有者との交渉、事業採算性の判断など、取引成立までには多くの工程がある。宇宙技術によって具体的に何が変わり、どのような成果につながるのか。
このセッションでは、衛星データを活用した実際の取引事例を取り上げ、技術の導入によって不動産取引の何が変わったのかを具体的に紹介する。衛星データの活用に関心を持つ企業にとって、実務に即した話を聞ける機会となりそうだ。
一方、昨年に続いて登場するのが、小説『地面師たち』の著者・新庄耕さんだ。

今年のテーマは「月面師たち〜誰が月の土地を動かすのか〜」。地球の不動産取引を描いてきた作家が、今度は月の土地に目を向ける。共に登壇するのは、TMI総合法律事務所のパートナー弁護士・新谷美保子さんと、アクティビスト個人投資家の田端信太郎さん。
月面開発が進み、将来、人類が月で生活し、企業が経済活動を行うようになったとき、土地の利用や権利はどのように扱われるのだろうか。宇宙条約では、月を含む天体について国家による領有を認めていない。一方、民間企業による活動や資源利用のルールについては、国際的な議論が続いている。地球上の土地のように所有権や取引を考えることができるのか。月面の開発には、地上とは異なる法的な課題がある。
月の土地は誰のものなのか。将来、月面での経済活動が本格化すれば、その利用や利益を巡ってどのような問題が生まれるのか。作家、法律家、投資家という異なる立場からの議論に期待したい。
こうした多彩なプログラムのなかで、主催者の阿久津さん自身は、どのような議論に期待しているのだろうか。
「今回こだわったのは、専門家だけの議論に終わらせず、かといってエンターテインメントだけにも偏らないことです。宇宙技術が実際のビジネスにどうつながるのかを、さまざまな立場の方に実感していただけるプログラムを目指しました。
例えば『月面師たち〜誰が月の土地を動かすのか〜』では、小説『地面師たち』の著者・新庄耕さんをはじめ、宇宙法の専門家や投資家の田端信太郎さんなど、異なる視点を持つ方々が集まります。月面開発の技術や法律だけでなく、『そもそも月面でビジネスは成り立つのか』という本質的な問いにも踏み込んでいきたいと考えています。
一方で、衛星データを活用した実際の不動産取引事例を紹介するセッションもあります。未来の可能性と、すでに生まれているビジネスの両方に触れることで、宇宙技術が決して遠い世界の話ではなく、自分たちの事業や暮らしにつながっていることを感じていただけたら嬉しいです」
今年、新たに始まる取り組みの一つが、大学発スタートアップによるピッチ大会「U-1 STARTUP」だ。「未来のインフラをつくる」をテーマに、AI、宇宙・エネルギー、不動産という3つの領域で選考を実施。予選を勝ち抜いた8社が、11月6日(金)に安田講堂で開催される決勝大会に臨む。
決勝には、北海道大学や東京科学大学、東京大学など、8つの大学に関連するスタートアップが進出する。大学で生まれた技術を社会に届けるには、研究開発だけでなく、事業化に向けた資金調達や顧客開拓、企業との連携が欠かせない。U-1 STARTUPは、その実現を目指す起業家たちと、産業界や投資家を結びつける場でもある。
決勝では、宇宙、スタートアップ投資、大学発イノベーションなどの分野で活動する5名の専門家が審査を担当する。各社は事業の独自性や市場性、成長可能性などを競い合う。審査員からの助言や参加者との交流も、今後の事業展開につなげる機会となるだろう。
また、俳優の本間日陽さんがSRC2026の公式アンバサダーとU-1 STARTUPのスペシャルサポーターに就任。研究や技術を社会に届けようとするスタートアップの挑戦を応援する。

さらに今年は、「SPACE REALTY INNOVATION AWARD」も開催される。衛星データやAIなどの先端技術を活用し、不動産ビジネスに新たな価値や事業機会を生み出した企業を表彰する企画だ。不動産AIツール『WHERE』の活用を通じて、従来は見つけにくかった不動産の価値を発見し、取引や事業機会につなげた成果に光を当てる。
新しい事業の可能性を競うピッチ大会と、すでに生まれた成果をたたえるアワード。SRC2026では、技術の事業化に向けた挑戦と、その先にある成果の両方を知ることができる。
今回の会場となるのは、東京大学大講堂、通称「安田講堂」だ。1925年に竣工し、国の登録有形文化財にも登録されている。東京大学の象徴として約100年の歴史を刻んできたこの場所に、今年は宇宙、不動産、建設、金融などの関係者が集う。

今年のSRCでは、大講堂での講演やパネルディスカッションに加え、ロビーや回廊などを活用した企業ブースの出展も予定されている。宇宙、不動産、建設、金融など、さまざまな分野の企業や団体が技術や取り組みを紹介し、関心を持った企業と直接話すこともできる。
講演終了後には、公式アフターパーティー「Gravity Night」も開催予定だ。参加は無料で、登壇者や企業関係者、研究者などが業界や肩書を越えて交流できる。新たな協業先を探している人にとっても、参加する魅力の一つだろう。なお、交流会への参加には受付上の条件があるため、詳細は公式サイトで確認してほしい。

宇宙技術を開発する企業には新たな顧客や事業パートナーとの出会いを、不動産業界の関係者には、これまで接する機会の少なかった技術や企業を知るきっかけをもたらす。講演や展示だけでなく、こうした交流にもSRCの魅力がある。
阿久津さんは、今後SRCをどのような場に育てていきたいと考えているのだろうか。
「宇宙×不動産という新しい市場をつくっていくためには、私たち1社だけではなく、さまざまな業界の方々が関わり、新たな挑戦が次々と生まれていくことが大切だと考えています。SRCを、単に新しい技術や情報を知るだけのイベントではなく、異なる分野の人たちが出会い、具体的なビジネスや共創が生まれる場に育てていきたいと思っています。
今年新たに開催する大学対抗ピッチコンテスト『U-1 STARTUP』も、その挑戦の一つです。箱根駅伝のように、普段スタートアップに馴染みのない人でも、母校や挑戦者を応援する。そんな文化をスタートアップの世界にもつくっていきたいと考えています。宇宙も不動産も、専門家だけのものではありません。業界に関係なく、新しい技術やビジネスに興味がある方、これから何かに挑戦したい方にも、ぜひ参加していただきたいです。SRCでの出会いが、皆さんにとって新たな一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです」
衛星データによる不動産取引の変革から、月面での土地利用、大学発スタートアップの挑戦まで。SRC2026には、宇宙技術を開発する企業だけでなく、その技術を自らの事業に生かしたい企業にとっても、数多くのヒントがありそうだ。
参加は無料で、事前登録制。東京大学安田講堂の会場に加え、オンラインでも参加できる。宇宙ビジネスと自らの仕事との接点を見つけに、会場を訪れてみてはいかがだろうか。
【開催概要】
●イベント名:宇宙×不動産カンファレンス2026(SPACE REALTY CONFERENCE 2026/SRC2026)
●開催日:2026年11月5日(木)・6日(金)
●会場:東京大学大講堂(安田講堂)/オンライン配信
●所在地:東京都文京区本郷7-3-1
●参加費:無料(事前登録制、一部VIPチケットあり)
●主催:宇宙×不動産カンファレンス(SRC2026)実行委員会
●運営:株式会社WHERE
●後援:国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会
●イベント詳細・参加申し込み:https://srconf.com/
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