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2026.10.23

高知からロケットを打ち上げるには――需要と適地から探る実現可能性【連載】高知は、宇宙港で変わるのか(第3回)

古谷文平さんと小松聖児さんが民間から立ち上げたスペースポート構想について、現在、高知県が実現可能性の検証を進めている。2026年4月、高知県は「高知県におけるスペースポート実現可能性研究会」を設置。取材当日の9月15日に開かれた第2回研究会では、県が進める基礎調査の中間報告として、ロケット事業者の需要や射場の適地に関する調査状況が報告され、その内容をもとに意見交換が行われた。県の基礎調査では、需要や適地、事業性などを順次検証し、その結果を研究会で共有しながら、高知での実現可能性を検討している。では、高知からロケットを打ち上げるには、どのような条件を確かめる必要があるのか。第3回では、需要、適地、地域との調整を中心に、その検証の中身を見ていく。(聞き手・文=JMP総合プロデューサー長谷川浩和)

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お話を伺ったのは

一般社団法人スペースポート高知 代表理事
古谷 文平さん
(写真左)

高知県出身。大学・大学院でアフリカの政治経済を学び、卒業後は豊田通商に入社。約10年間、アフリカ関連の事業に携わる。2019年に高知へ戻り、家業のホテル経営に参画。人口減少や若者の県外流出など、高知の将来を考える中でスペースポート構想を提唱。2025年2月に一般社団法人スペースポート高知を設立し、代表理事に就任した。

一般社団法人スペースポート高知 理事
小松 聖児さん
(写真右)

高知県出身。幼少期から宇宙に関心を持ち、米国ユタ大学、大阪大学大学院を経て三菱電機に入社。人工衛星の通信システム開発に携わった後、宇宙スタートアップのispace、ニュージーランドのRocket Labへと移り、人工衛星の通信システム開発を中心に、宇宙開発の実務経験を重ねる。海外の打上げ現場で得た知見を生かし、古谷さんとともにスペースポート高知の構想を推進している。

政策提言から県の検証へ――民間発の構想はどこまで進んだか

一般社団法人スペースポート高知が設立されたのは2025年2月。同年、活動の中心となったのが、高知県への政策提言づくりだった。

提言づくりでは、まず盛り込む項目を整理し、それぞれに必要な専門知識を洗い出した。そのうえで、勉強会やワーキンググループを重ね、専門家や会員の知見を提言へ反映していった。経済波及効果など専門的な分析が必要な分野では、会員として活動に加わる地元金融機関の研究機関などにも協力を求めた。

「まず政策提言に必要な項目を決めて、その内容を深めるには、どの分野の専門家に話を聞く必要があるのかを逆算して考えました。経済波及効果のように自分たちでは算出できない領域は、専門性を持つ会員の方々にも協力をお願いしました」(小松さん)

事業面では、継続的な運営に必要な収益や再投資のあり方についても、ワーキンググループで議論を重ねた。

2025年10月、スペースポート高知は「スペースポートの開港及び宇宙産業の振興」に関する政策提言を高知県へ提出した。翌2026年4月には県が「高知県におけるスペースポート実現可能性研究会」を設置。県内外の専門家や県内の経済関係者、市町村関係者らを交え、高知でスペースポートを検討する際に必要となる条件について議論が始まった。


2026年9月15日に開かれた「第2回高知県におけるスペースポート実現可能性研究会」。需要調査や適地調査の中間報告をもとに意見交換が行われた

県が進める基礎調査では、需要調査、適地調査、事業性評価、経済波及効果の試算、事業スケジュールの整理、洋上射場の検討などが予定されている。9月15日の第2回研究会で報告されたのは、その途中経過であり、主に需要と適地に関する調査内容だった。

研究会では、需要、適地、事業性などを調べ、その結果をもとに政策提言の実現可能性を検証していく。民間から始まった構想について、現在は県が需要や適地を調査し、その結果を踏まえて事業性や経済波及効果などを検証していく計画となっている。

ロケット事業者は高知を使うのか――調査で見えた4社の可能性

スペースポートの事業性を考えるうえで欠かせないのが、射場を利用するロケット事業者の需要である。今回の基礎調査では、国内の垂直型ロケット10社について、種類や開発状況、打上げ拠点、今後の計画など、公開情報をもとに高知を拠点とする可能性を検討したうえで、対象となる事業者にヒアリングを行った。海外ロケットについては、国内ロケットの需要を見極めたうえで補充的に調査する位置づけとし、現段階では保留している。

9月15日の中間報告では、デスクトップ調査とヒアリングを踏まえ、4社についてスペースポート高知を打上げ拠点とする可能性があるとの整理が示された。ただし、調査側からは、対象となった4社はまだ開発途上にあり、必要とする射場の機能も固まり切っていないとの説明があった。4社の利用が確定したわけではなく、現時点では、高知を打上げ拠点とする可能性があると整理された段階である。

ヒアリングでは、安全確保に必要な保安距離や火薬庫などの設備、火薬を陸上輸送できる環境、航空管制との関係で打上げ時間を確保しやすいこと、地元事業者や漁業関係者との調整のしやすさなど、具体的な条件が挙がった。射場選びでは、設備の仕様だけでなく、周辺環境や地域との調整も判断材料になる。

小松さんのもとにも、ロケット事業者から問い合わせが寄せられているという。

「ロケット事業者から問い合わせをいただき、高知を射場として使う可能性について話をすることはあります。ただ、現時点で『高知に必ず射場をつくれます』と言える段階ではありません。県の研究会で一定の方向性が見えてくれば、事業者の皆さんにも、高知をより具体的な選択肢として考えてもらえるようになると思っています」(小松さん)

開発中のロケットにとって、どこから打ち上げるかは事業計画と切り離せない。古谷さんは、2030年前後の打上げを見据える企業がある中で、スペースポート高知が2029年という目標を掲げていることに関心を示す事業者もいると話す。

「ロケットを開発している企業の中には、2030年頃に打上げを計画しているところもあります。私たちが2029年という目標を掲げたとき、その時期に関心を持ってくださる企業があったことは、一つの手応えだと感じています」(古谷さん)

今回の需要調査によって、ロケット事業者が射場を選ぶ際に重視する条件の一端が見えてきた。一方で、研究会では、ロケットの需要は人工衛星の打上げ需要にも左右されることや、開発中のロケットについては射場の要求仕様自体が今後変わり得ることも指摘された。研究会では、今後の需要を考える際には、ロケット事業者の計画だけでなく、その上流にある人工衛星の打上げ需要も見ていく必要があるとの指摘があった。

射場はどこにつくれるのか――候補地を絞る条件

需要調査と並行して、射場の適地調査も進んでいる。現在は、射場整備に必要な要件を整理し、それを高知県内の地理や土地利用に当てはめながら、複数のエリアを検討している段階だ。

陸上射場の場合、打上げ方位や保安距離、必要な土地面積、道路へのアクセス、法規制、騒音や振動、自然災害の影響、地域住民や漁業、航空との関係など、検討項目は幅広い。第2回研究会では、打上げ方位や保安距離、土地面積、道路など、初期段階で確認する条件をもとに複数のエリアを絞り込んでいる途中経過が報告された。

現段階では、具体的な地点まで絞り込まれているわけではない。

「政策提言では、陸上射場について一定のエリアを示しました。ただ、その中のどこであれば現実的に成立するのかは、いま県の調査で見ていただいている段階です」(古谷さん)

洋上射場については、さらに基礎的な要件整理が続いている。今回の調査では、船舶型、フロート型、プラットフォーム型など複数の方式を想定しているが、既存の洋上射場については、立地を選んだ根拠や整備要件に関する公開情報が限られているという。

そのため今回の調査では、洋上風力発電や海上プラットフォームなど類似施設の知見も参考にしながら、射場に必要と考えられる条件を、現段階の仮説として整理している。今後は、有識者へのヒアリングを通じて、その内容を補っていく予定だ。


スペースポート高知が描く洋上射場のイメージ(スペースポート高知資料より引用)

第2回で見たように、高知には太平洋に面する地理や、港、空港、市街地への近さといった特徴がある。適地調査では、そうした高知の地理的な特徴を、保安距離や法規制、道路、自然災害、周辺との関係といった射場側の要件と照らしている。現在は複数のエリアを対象に検討しており、今後さらに社会的・環境的条件を確認していく予定だ。

地域の理解なくして成り立たない

適地調査では、地理や法規制だけでなく、地域住民、漁業、航空などとの関係も検討項目に入っている。ロケット事業者へのヒアリングでも、地元との調整のしやすさは射場を選ぶ際の要素として挙げられた。古谷さんも、候補地の選定と地域との調整は切り離せないと考えている。


射場の適地を検討するうえでは、地域住民や漁業関係者などとの調整も重要な論点となる(スペースポート高知資料より引用)

「まず場所を見いだす必要があります。そのうえで、地域の方々としっかり調整し、地域振興につながる形で進めることが大切です。地域の理解なくして、スペースポートは成り立たないと思っています」(古谷さん)

古谷さんによれば、宇宙開発の関係者と射場について話す際にも、地域との調整は重要な論点として挙がることが多いという。候補地が具体化すれば、技術的な条件だけでなく、地域振興につながる形をどうつくるかについても、地域側との議論が必要になる。

商業打上げの前にも需要はある――燃焼試験・実証の可能性

第2回研究会では、商業打上げに至るまでの研究開発や実証を、射場側がどう支えるかについても議論が及んだ。ロケット事業者へのヒアリングでは、商業打上げ前の実証利用や燃焼試験についても声があり、意見交換では、研究開発から実証、商業打上げへと進む事業者の時間軸に、射場整備をどう合わせるかが論点となった。

小松さんは、ロケット事業者との対話を通じ、燃焼試験など打上げ前の開発環境にも需要があると感じている。

「ロケット事業者と話していると、エンジンの燃焼試験を行える場所が足りないという話も出てきます。射場だけでなく、研究開発や実証の段階で必要になるインフラについても、具体的に考えていく必要があると思っています」(小松さん)

燃焼試験設備に求められる仕様も、ロケットによって異なる。研究会では、固体燃料か液体燃料か、またロケットの規模によって必要な設備が異なることも説明された。対象とするロケットの種類や開発段階によって、必要な設備や仕様は変わってくる。

研究会の意見交換では、ロケット事業者の開発と射場整備を別々に考えるのではなく、研究開発から実証、商業打上げまでの時間軸を踏まえて整備シナリオを検討すべきではないか、との意見も出た。

2026年9月15日時点で、基礎調査は中間段階にある。今後は適地調査をさらに進め、事業性評価や経済波及効果の試算、事業スケジュールの整理を進める。その結果を踏まえ、政策提言の実現可能性を総合的に検証する計画だ。

高知では、県による調査と並行して、地域側でも宇宙との接点が生まれている。県内企業が参加するワーキンググループや教育分野での活動など、射場の整備そのものとは別に、地域が宇宙産業と関わる取り組みも進んでいる。

次回は、スペースポートを支える「地上のビジネス」に目を向ける。建設や観光をはじめとする地域産業、そして大学や学生は、宇宙とどう結びつくのか。すでに高知で動き始めている企業や大学、学生たちの挑戦を追う。

(第4回に続く)

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