宇宙は一部の超大国だけが独占する領域だと思ってはいないか。近年は高度2,000kmまでの軌道である「地球低軌道(LEO)」へのアクセス費用が低下し、これまでは宇宙開発と無縁だった新興国が次々と自前の人工衛星を打ち上げている。他国の技術に依存するのではなく、自分たちの手で衛星を組み立て運用する。この自立した宇宙インフラの構築は、新興国の経済を根本から底上げする確かな手段となりつつある。
世界有数のコンサルティングファームがまとめた最新レポートから、急速に多極化する宇宙ビジネスのリアルな現状を紐解く。(文=SpaceStep編集部)
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2026年7月23日、経営コンサルティングファームのA.T. カーニー株式会社は、レポート「軌道への跳躍――LEOはいかに新興国の宇宙能力開発を加速し得るか」を公開した。地表から高度2,000km以下の高さを周回する人工衛星の軌道「地球低軌道(LEO=Low Earth Orbit)」への参入ハードル低下が、新興国の宇宙能力開発をいかに加速しているか、分析したレポートだ。

(引用元:PR TIMES)
レポートが浮き彫りにしたのは、技術の進歩などの複合要因による宇宙ビジネスへの大幅な参入ハードル低下と、それに伴うプレーヤーの多様化である。過去15年間で新たに設立された宇宙機関は20を超え、年間打ち上げ数は2017年比で5倍に急増。現在では90以上の国が稼働中の人工衛星を運用している。

(引用元:PR TIMES)
この急激な変化をもたらした最大の要因は、打ち上げコストの劇的な低下だ。1980年代から90年代にかけて、地球低軌道への打ち上げには1キログラムあたり2万ドルを超える費用がかかっていた。しかし今は、SpaceXのライドシェア(相乗り)ミッションを活用することで、コストが5,000ドル未満と4分の1以下にまで下がっている。さらに小型衛星であれば、構想から軌道投入まで18カ月未満で完了するほどに開発サイクルも短縮された。
ここで注目すべきは、新興国が単に資金を出して先進国に衛星を作らせているわけではないという点だ。レポートによれば、過去5年から10年の間に約20の新興国が、自国で衛星の組立、統合、試験を行う「AITインフラ」の整備を加速させている。部品の製造からデータ活用に至るまで、宇宙のバリューチェーン全体で自立に向けた動きが活発化しているのだ。
なぜ新興国は自前で人工衛星を組み立てる施設を整備しようとするのか。それは、宇宙インフラが一国の経済を支える重要な基盤となっているからだ。

(引用元:PR TIMES)
現在の宇宙市場において、全体の約91%は通信や地球観測データサービスといった「下流領域」が占めており、今後も成長が見込まれている。一方、衛星の製造や打ち上げ、地上設備といった「上流領域」の市場規模は約9%にとどまる。しかし、このわずか9%の上流能力を自国で保有することこそが、他国の思惑に左右されない技術的自律性を保つための生命線となる。
独自の地球観測データや通信ネットワークを持てば、農業の効率化や災害時の迅速な対応など、国を豊かにするための施策を自らの意思で進めることができる。さらにレポートでは、新興国が単独で動くだけでなく、周辺国と衛星群を共有する地域連携や、宇宙資産を活用した経済の多角化が、持続的な利益を生み出すための重要な行動として挙げられている。
宇宙空間はもはや、一部の大国が威信をかけて争う特別な場所ではない。世界中のあらゆる国が、自国の生活水準や産業競争力を引き上げるために実用的なインフラとして活用するフェーズへと移行したと言える。
こうした新興国の台頭は、すでに高度な技術を持つ日本の宇宙企業にとっても、共同開発や運用ノウハウの提供といった新たな国際展開のチャンスとなる。世界の空で多様なプレーヤーの衛星が飛び交い、互いに連携し合う。特定の国に依存しないこのオープンな宇宙経済圏の広がりは、地球規模の社会課題を解決する土台となっていくはずだ。
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