世界各国や民間企業による月面探査や資源開発が加速する中、月面で安全かつ正確に活動するための環境整備が急務となっている。とりわけ、地球上では当たり前に利用されているGPSのような測位インフラが月面にないことは、探査機や自動走行ローバーの正確な運行、物資輸送の効率化を阻む大きな要因のひとつであった。
こうした月面活動を支える基盤インフラの欠如という課題を解消すべく、月測位衛星の実装に向けた新たなアプローチが動き出している。2026年7月、株式会社アークエッジ・スペースは、宇宙戦略基金の採択事業として開発を進める100キログラム級の月測位実証衛星の製造拠点「新木場ラボ」を東京都江東区に新設し、月に向けて打ち上げる実証衛星の製造フェーズへ移行したことを発表した。国際標準フレームワークとの相互運用性を視野に入れた衛星インフラの製造が、未来の月面開発を支える土台を築こうとしている。(文=SpaceStep編集部)
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超小型衛星コンステレーションの企画や設計、量産化から運用までを手がけるアークエッジ・スペースは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運営する宇宙戦略基金の技術開発テーマ「月測位システム技術」の実施機関として、実証衛星の開発を進めている。同社が東京都江東区新木場に整備した「新木場ラボ」は、クリーンルームや各種計測機器を備えた専用の製造拠点だ。
(引用元:PR TIMES)
2024年11月に本事業の実施機関として採択されて以降、月測位ペイロードシステムや100キログラム級の月測位実証衛星の開発、運用およびミッション評価システムの検討を重ねてきたが、今回のラボの整備によって実際の衛星を組み立て・製造するフェーズへと移行したことになる。
本事業の鍵となるのが、国際的な月通信・測位フレームワークである「LunaNet」の標準規格(LNIS/LSIS)との相互運用性および互換性の確保だ。開発する実証衛星は月周回軌道に投入され、月面に配置した受信機との間で月測位衛星システム(LNSS)信号の送受信実証を行う計画となっている。さらに同社は、2030年代以降の定常的運用サービス(FOC)を見据えたフィージビリティ・スタディ(新規プロジェクトの実行可能性調査)や受信機開発の技術検討も並行して進めている。
アークエッジ・スペースによる月測位実証衛星の製造拠点整備は、月面開発の競争軸が「単発の探査や着陸」から「持続的な活動を支える基盤インフラの構築」へと本格的に移行し始めたことを物語っている。
今後の月面活動においては、ローバーの自動走行や資材輸送、資源探査など、さまざまなオペレーションが同時に展開されていく。そうした環境下において、位置情報や航法、正確な時刻同期を司るPNT(Positioning, Navigation and Timing)インフラは、あらゆる活動を支える不可欠な共通基盤といえる。目印のない広大な月面でローバーが自律走行し、資材を目的地へ確実に届けるためには、地球上のGPSと同様に信頼性の高い測位データが前提となるからだ。

(引用元:PR TIMES)
加えて、本取り組みの真価は、国際標準規格であるLunaNetに準拠した機器や信号体系をいち早く製造・実証する点にある。国際的な互換性を持つインフラを先行して形にすることは、今後世界中から参入してくる月面開発事業者に対して共通規格のサービスを提供できる強みとなるからだ。その実績は将来的に、グローバルな月面サプライチェーンにおける優位性の獲得へとつながるだろう。
月面ビジネスが産業として立ち上がるためには、活動を支えるインフラの整備が欠かせない。アークエッジ・スペースが提示した衛星製造と実証のモデルは、日本が世界の月面活動を支える共通プラットフォームを築くための重要な一歩となることが期待されている。
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