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2026.08.21

「足で探す」不動産仕入れを、宇宙から変える【連載】非宇宙産業から宇宙に挑む!

市場に出る前の土地を、どう見つけるか。不動産事業の起点となる仕入れの現場では、いまも担当者が街を歩き、空き地や古い建物を探している。こうした属人的な業務を、衛星データとAIによって変えようとしているのが、JAXA発スタートアップの株式会社WHEREだ。創業者が不動産業界で培ってきた実務知と宇宙由来の技術を結びつけ、候補地の探索から所有者へのアプローチまでを支援する仕組みを構築している。その事業の成長を担うのが、異なる業界で新規事業やSaaSに携わってきた取締役 COO 事業開発管掌の西村 仁さんだ。不動産の実務知と宇宙技術、そして西村さんの事業開発経験は、仕入れの現場をどう変えようとしているのか。西村さんに、その挑戦の現在地を聞いた。(文=JMP総合プロデューサー 長谷川 浩和)

お話を伺ったのは


株式会社WHERE 取締役 COO 事業開発管掌
西村 仁さん

東海大学工学部卒業後、アパレル企業、コンサルティング会社を経て、印刷会社で10年以上にわたり、官公庁との連携を含む新規事業開発に従事。その後、SaaS企業でリーガルテック領域の事業を率いる。2025年に株式会社Penetrator(現WHERE)へ参画し、同年4月に取締役COOに就任。事業戦略の実行を担い、マーケティング、営業、カスタマーサクセスをはじめとする事業基盤の構築を推進している。

宇宙ではなく、事業の可能性に引かれた

西村さんは現在、WHEREの取締役COOとして、同社が掲げる事業計画を実行に移す役割を担う。経営上の課題を整理し、事業を動かすための施策やオペレーションへ落とし込んでいく。西村さんはこれまで、複数の業界で新規事業の立ち上げから成長までを担ってきた。業界や商材が変わっても、その軸は一貫している。

WHERE 代表取締役CEOの阿久津 岳生さんとは、高校・大学の同級生である。高校、大学時代からの同級生である。社会人になってからも交流は続き、互いの仕事や挑戦について報告し合ってきた。

西村さんの心を動かしたのは、阿久津さんから投げかけられた一つの問いだった。

「阿久津から、『ずっと働く側のポジションにいることが、本当に自分の身の丈に合っているのか』と聞かれたんです。私は会社員として働き続けるつもりでしたし、そこに違和感もありませんでした。ただ、その問いは、なぜか心に残りました」(西村さん)

当時のWHEREは、サービスをリリースし、複数の初期顧客を獲得した段階にあった。同社には、不動産という大きな市場と、JAXAでの研究を起点とする技術があった。そこから事業を本格的に拡大するには、営業、マーケティング、カスタマーサクセスを含む実行体制の強化が求められていた。

「話を聞くうちに、これまで自分が取り組んできたSaaS事業の経験を生かせると感じました。事業を次の規模へ成長させる局面に、自分が加わる意味があると思ったんです」(西村さん)

宇宙に詳しかったから選んだわけではない。事業の可能性と、自らが果たすべき役割が見えたことが、2025年のWHERE参画につながった。

西村さんが事業開発において大切にしてきたのは、「諦めずにやり続けること」だ。新しい事業は、計画通りに進むとは限らない。社内外の理解を得るまでに時間がかかり、成果が見えない時期もある。それでも実現する方法を探り続ける姿勢が、西村さんのキャリアを貫いている。

WHEREは、不動産仕入れのあり方を変え、衛星データを活用した事業を育てながら、その先に火星での展開を見据えている。「私たちは、ここから5年、10年、15年の物語をつくっていきます。今回の舞台は宇宙ですが、宇宙かどうかにかかわらず、大切なのはやり続けることです。その先に、自分たちの足跡を残したいと思っています」(西村さん)

不動産の経験と宇宙技術が交わった

この事業の原点にあるのは、阿久津さんが、不動産業界で直面した課題である。

阿久津さんは、不動産・建築分野で事業を手掛けてきた。東日本大震災を契機に、不動産が人の暮らしや地域に与える影響の大きさを改めて意識し、より広い視点から社会を変える方法を模索するようになったという。

やがて、その視線は宇宙へ向かう。西村さんによると、阿久津さんは、より大きな視点から社会を変える方法を考える中で、人類の活動領域を地球の外へ広げる構想を抱くようになった。その先に浮かんだのが、火星でのビジネスだった。

阿久津さんは、JAXA宇宙科学研究所内の総合研究大学院大学で、宇宙技術の研究に取り組んだ。そこで、月面のクレーター解析に取り組むチームと接点を持った。その解析技術や知見を地球観測データの解析に応用し、AIに教師データを与えることで、空き地や駐車場、古い建物などを判別できないか。そんな問いから検証が始まった。

この技術に、阿久津さん自身の不動産経験が結びついた。不動産会社を経営していた頃、阿久津さんも、市場に出る前の土地や建物を街中で探していた。土地の仕入れは事業の起点となる一方、候補地を見つけるには、人が現地を歩き、自らの目で確かめる必要があった。

「阿久津自身、遊休不動産を足で探していました。手間のかかる仕事ですが、不動産事業では上流にある仕入れを押さえなければ、その先へ進めません。その経験と、上空から土地を見る技術が結びつきました」(西村さん)

不動産の現場で感じていた課題を、宇宙からの視点で捉え直す。不動産AIツール「WHERE」は、こうして生まれた。

最初のプロトタイプを不動産デベロッパーに見せると、「面白い」との反応が返ってきたという。これまで人が歩いて探していた土地を、上空から広く見つけられる。それまでにない発想として受け止められた。

西村さんが参画した後は、阿久津さんが描く火星での構想と、地球上の不動産事業とのつながりについて議論を重ねた。その過程で、長期構想を社内外で共有できる形に整理していった。

「阿久津は、もともと火星でビジネスをしたいという思いを持っていました。一方で、いま地球で取り組んでいる不動産事業と、どのようにつながるのか。それを会社として分かりやすく伝えるために、時間をかけて議論しました」(西村さん)

そこで定まったのが、「人類の活動領域を拡大する」というミッションである。使われていない土地を見つけ、人や企業の新しい活動につなげる。その延長線上に、火星で人が活動できる場所を探す未来がある。

「そう考えると、地球と火星はまったく別の事業ではありません。議論を重ねる中で、一本の線としてつながっていることが見えてきました」(西村さん)

「歩いた道しか見えない」不動産仕入れ

不動産会社やデベロッパーにとって、市場に出る前の土地を見つけることは、事業の競争力を左右する。一般の不動産情報サイトに掲載された土地は、すでに多くの事業者に知られている。条件の良い土地には買い手が集まり、価格も上がりやすい。競合に先んじて土地を仕入れるには、まだ売りに出されていない土地や、十分に活用されていない建物を見つけ、所有者へ直接働きかける必要がある。その探索は、いまも担当者の経験と行動力に支えられている。

「不動産会社へ伺うと、担当者の方が、空いた時間に『少し外を回ってきます』と言って、本当に街を歩いているんです。地図を見ながら、良さそうな土地があれば写真を撮り、住所を控える。会社へ戻ってから登記を取り、所有者を調べ、ハザードや境界も確認します」(西村さん)

候補地を見つけても、そこから多くの調査が始まる。公図や登記情報を確認し、所有者を特定する。用途地域、土地の境界、災害リスク、権利関係などを調べ、事業に適した場所かを判断する。さらに、所有者へ連絡し、売却や土地活用への意向を確かめなければならない。

「一番の制約は、歩いた道しか見えないことです。一本先の道に良い土地があっても、そこを通らなければ見つけられません。人が街全体を網羅的に歩くのは、現実的には難しいんです」(西村さん)

経験豊富な担当者であれば、建物の状態や周囲の環境から、仕入れにつながる可能性を読み取れる。しかし、その知見は個人に蓄積されやすく、組織全体で共有することは容易ではない。

不動産業界を取り巻く環境も変化している。建築資材の価格や職人の人件費が上昇し、建物にかかるコストは増している。その中で、事業の採算を左右する重要な要素となるのが、土地の仕入れである。

すでに市場へ出ている土地は、人気があれば価格も上がる。一方、まだ市場に出ていない土地であれば、所有者の事情やタイミングに応じて、適正な条件で交渉できる可能性がある。

「良い土地を仕入れられれば、良い商品をつくることができます。土地を見つけることは、不動産事業の売上につながる入り口です。だからこそ、その業務を変える意味は大きいと思っています」(西村さん)

WHEREが変えようとしているのは、探索にかかる時間だけではない。担当者の経験や行動範囲に依存してきた仕入れを、組織として再現できる業務へ変えることにある。

候補地の発見から、所有者との接点まで

不動産AIツール「WHERE」は、衛星データとAIを活用し、空き地、駐車場、古い建物などの候補をマップ上に表示する。

人が街を歩いて一つずつ探してきた対象を、まず上空から広く捉える。さらに、衛星画像に写る土地をすべて人が確認するのではなく、AIに対象物の特徴を学習させ、条件に合う候補を抽出する。

「上から見れば、広い範囲を網羅できます。ただ、画像を一つずつ人が確認していては大変です。そこで、正解となるデータをAIに学ばせ、必要な土地を見つけられるようにする。それがWHEREの出発点です」(西村さん)

WHEREは、全国の衛星データと不動産情報約7,300万件をデータベース化している。エリアや物件の条件を指定すると、該当する候補を短時間で把握できる。

ただし、不動産仕入れは、土地の候補を見つけたところで終わらない。候補地が見つかれば、公図や登記情報から所有者を確認する。用途地域、筆界、ハザード情報などを照らし合わせ、開発や出店、設備の設置に適した土地かを判断する。その後、所有者へ手紙や電話で連絡し、売却や土地活用の意向を確かめる必要がある。

WHEREは、こうした一連の業務を一つのプラットフォームで支援している。登記情報、公図、地積測量図などを取得・管理し、用途地域、筆界、ハザードマップなどを地図上に重ねて確認できる。所有者へのアプローチ状況も管理し、候補地ごとの進捗を把握する。

モバイル端末から現地で情報を確認し、その場で写真や調査結果を登録することも可能だ。従来は、地図、登記情報、表計算ソフト、営業管理ツールなどに分かれていた業務が、一つの流れとしてつながる。探す、調べる、連絡する、案件として管理するという工程を、担当者ごとの方法から、組織で共有できる仕組みへ変えていく。

「遊休不動産を特定した後も、所有者へアプローチし、ダイレクトメールを送り、問い合わせに対応する仕事があります。そこには、かなり人の手がかかります。私たちは、そのプロセスも含めて支援し、成果に近いところまでお客さまと一緒に進みたいと考えています」(西村さん)

候補地の探索やリスト作成に費やしていた時間を、所有者との対話や商談に振り向けられるようになる。どの地域に何件の候補が存在するかを把握できれば、事業計画から必要な活動量を逆算することも可能だ。

「面白い技術だから導入するのではなく、事業としてどのような成果を見込めるのかを、数字でお伝えすることを大切にしています。どの地域に何件の候補があり、目標を達成するには何件へアプローチする必要があるのか。活動量をデータで考えられるようになります」(西村さん)

衛星データを、現場で使える情報へ

衛星データは、以前と比べて民間企業が利用しやすいものになった。一方、不動産業務へ組み込むには、上空から得られる画像だけでは情報が足りない。土地や建物の状態は、時間とともに変化する。空き地だった場所で工事が始まり、建物が取り壊され、新しい施設が建つこともある。

変化を捉えるには、現在の画像だけではなく、継続的に取得されたデータが必要になる。撮影頻度や画像の粒度は衛星によって異なり、必要なデータを揃えるにはコストもかかる。

「衛星データが活用しやすくなっていることは間違いありません。ただ、データの鮮度をどう保つのか、過去からの変化を追うための時系列データをどう集めるのかという課題も見えてきました」(西村さん)

さらに、衛星画像だけでは、土地の境界、所有者、用途地域、災害リスクなどは判断できない。

「衛星データだけでは、どうしても誤判別が起こります。ハザード情報は画像を見ただけでは分かりませんし、土地の境界も上空からの画像だけでは把握できません。一方で、地上にはそうした情報が存在しています。それらを重ねることで、実務で使える情報に近づいていきます」(西村さん)

地上側のデータを集めることにも難しさがある。行政が保有する情報は、自治体によって公開範囲や形式が異なる。同じ種類の情報でも、データとして公開されている地域もあれば、利用方法が限られている地域もある。

例えば学区は、不動産事業者にとって重要な情報だが、自治体によっては民間利用が難しい場合がある。その際には、情報を保有する民間企業との連携など、別の方法を検討する必要がある。

WHEREは相模原での実証実験で、水道の閉栓情報と空き家の相関も検証した。水道が長期間使われていなければ、空き家である可能性を推測する材料になる。一方、水道の利用状況は慎重な取り扱いが求められる情報でもあり、全国で一律に活用できるわけではない。

「価値のあるデータであっても、すぐに使えるとは限りません。自治体や企業の皆さんと対話しながら、実証実験を重ね、どのような形で社会に生かせるかを考えていく必要があります」(西村さん)

データは、実際に組み合わせてみて初めて、その質や相性が分かることもある。上空から得る画像に、登記、地図、行政、民間企業が持つ情報を重ねる。必要に応じて、車両から得られる横方向の画像や、人が現地で確認した情報も加える。

「衛星から見ても、道路から見ても分からないことはあります。その時には、人が現地へ行き、ポストや玄関の状態を確認する。上からのデータ、横からのデータ、現地で得た情報を組み合わせることで、精度をさらに高められます」(西村さん)

WHEREは、衛星データを登記や行政情報、現地で得られる情報と組み合わせ、不動産の現場で判断に使える形へ整えている。

テクノロジーと人の実務で、成果へつなぐ

WHEREの事業は、三つの層で構成される。第1の層は、候補地の探索から登記情報の確認、所有者へのアプローチ、案件管理までを支援する不動産AIツール「WHERE」である。第2の層は、候補地の精査やダイレクトメールの発送、問い合わせ対応などの業務を担うBPaaS(Business Process as a Service)だ。第3の層は、グループ会社の宇宙不動産による、地権者との交渉や仲介などの取引支援である。

候補地を見つけ、所有者から反応を得られても、顧客企業の体制によっては、交渉や仕入れまで進めることが難しい場合がある。そこでWHEREは、ソフトウェアの提供にとどまらず、取引の成立に向けて必要となる業務まで支援する。この考え方を、同社は「Deal Tech(ディールテック)」と表現している。

「お客さまが求めているのは、サービスを導入すること自体ではなく、その先の成果です。必要な部分には、私たちも実務として関わる。その姿勢を表す言葉として、Deal Techを掲げています」(西村さん)

WHEREでは、導入後の運用体制も重視している。どのような成果を目指し、誰がプロジェクトを推進するのかが定まっていなければ、ツールの機能を十分に生かすことは難しいからだ。

「ツールをご用意するだけで、自然に成果が生まれるわけではありません。経営者がこの取り組みをどのように位置づけ、誰が推進し、どのような目標を置くのか。そこをお客さまと一緒に考えることが大切です」(西村さん)

必要に応じて、WHEREのカスタマーサクセス担当者が、プロジェクトマネージャーに近い立場で顧客企業に伴走する。その背景には、仕入れのノウハウを組織として継承するという課題がある。

「経営者や担当者の方々が築いてきた人脈や経験は、大切な資産です。一方、次の世代へ事業を引き継ぐ時に、それらをどのように継承するかという課題があります。人が培った力を生かしながら、組織として再現できる方法を加えていくことが重要だと考えています」(西村さん)

「場所」と「変化」を起点に広がる可能性

WHEREの活用領域は、不動産会社やデベロッパーから、再生可能エネルギー、店舗開発などへと広がっている。

「不動産会社は良い土地を仕入れたい。店舗開発を行う企業は、良い場所に店を出したい。再生可能エネルギー事業者は、設備を設置するのに適した土地や屋根を探したい。業界は違っても、『場所を見つけたい』という課題は共通しています」(西村さん)

衛星データは、時間の経過に伴う土地や建物の「変化」も捉えられる。例えば金融機関では、担保となっている土地の状態を確認するため、定期的に現地を訪れる場合がある。衛星画像を継続的に比較できれば、変化が起きた場所を絞り込み、現地確認の負担を軽減できる可能性がある。

「金融機関が、担保となっている土地を定期的に確認している事例を知り、自分たちが考えていたニーズは確かに存在すると感じました。『変化を見る』という価値は、不動産仕入れ以外にも広がると思っています」(西村さん)

衛星データと別の情報を組み合わせ、地域の将来性を探る構想もある。その構想にもとづいて開発・実装した一例が、夜間光の強さと不動産価格のデータを掛け合わせた「ポテンシャル不動産」だ。夜間光の強さに対して不動産価格が相対的に低い地域を特定できれば、今後の成長余地を探る手掛かりになり得る。

AIの活用も、候補地の判別から、顧客ごとの提案へと広げていく構想だ。

「どのような地域を探しているのか、どの土地が実際に成約したのか。そうしたデータを学習し、お客さまごとに最適な土地を提案する。AIがお客さまのエージェントになる世界をつくりたいと考えています」(西村さん)

西村さんは、衛星データを使うこと自体が目的ではないと語る。

「衛星データを主語にする必要はないと思います。まず、自分たちが解決したい課題がある。その選択肢の一つとして衛星データを見た時に、『そんなことまでできるのか』という発見がある。別のデータや現場の知見と掛け合わせることで、さまざまな価値を生み出せます」(西村さん)

地球で磨いた方法を、いつか火星へ

WHEREの現在の事業領域は、地球上の不動産市場である。その先に、同社は火星を見据えている。火星にも衛星や探査機から得られた地形データはあるが、それだけで人が活動する場所を判断することはできない。居住地や活動拠点を選ぶには、火星の地表から得られるデータも必要になる。

「火星にも、上空から得られたデータはあります。ただ、火星側の地上データは十分ではありません。風や揺れ、地面の硬さなど、人が活動する場所を決めるために必要な情報を、これから取得していく必要があります」(西村さん)

これは、地球上の不動産を評価する際に、衛星画像と地上データを組み合わせる考え方と重なる。現在のWHEREは、衛星データに登記や行政情報などを重ね、地球上の不動産を評価している。

将来、火星で事業を展開するには、現地の地上データを自ら取得する必要がある。探査技術で火星表面の状態を計測し、衛星データと組み合わせる。その先に、人が安全に活動できる場所を見つける構想がある。

「いまは、衛星データと地球上のデータを組み合わせています。火星では、自分たちで地上データを取りに行く側になる。それを衛星データと組み合わせ、人が活動できる場所を見つける。地球で取り組んでいることと、同じ考え方でつながっています」(西村さん)

地球上の遊休不動産を見つける事業と、火星で人が暮らせる場所を探す構想。一見すると、大きく離れた二つの挑戦である。

しかし、上空から場所を捉え、地上の情報を重ね、人が活動できる場所かどうかを判断するという点では、同じ発想に立っている。宇宙を目指してキャリアを歩んできたわけではない西村さんも、いまではその未来を実現する当事者の一人である。

「私は、自分の足跡を残したいと、ずっと考えてきました。AI、衛星、宇宙という新しいフィールドで、これまでの経験を生かしながら事業をつくれることは、とても魅力的です。ここまで来たからには、しっかりやり切りたいと思っています」(西村さん)

「人類の活動領域を拡大する」というミッションは、火星だけを見据えた言葉ではない。地球上で眠っている土地の可能性を見つけ、人や企業の新たな活動へつなげる。その積み重ねが、やがて地球の外へと続いていく。

取材を終えて

今回の取材では、終始、西村さんの熱量を感じました。不動産業界が抱える課題から、WHEREの事業を成長させるための仕組み、さらに火星を見据えた未来まで、話題が広がっても言葉の芯は一貫していました。COOとして事業の実行を担う責任感と、新たな市場を自らつくろうとする強い意志が、言葉の端々から伝わってきました。

西村さんは、もともと宇宙業界で働いていたわけでも、宇宙を目指してキャリアを歩んできたわけでもありません。異なる領域で培ってきた事業開発の知識と経験を、株式会社WHERE 代表取締役CEOの阿久津 岳生さんとのご縁をきっかけに、宇宙産業の事業づくりに生かしています。その姿は、まさに「非宇宙産業から宇宙に挑む」一つの形です。いま宇宙に携わっていない読者の方にも、これまで培ってきた経験が宇宙産業への入口になり得ると感じていただけたのではないでしょうか。

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