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2026.05.29

宇宙データの品質を統一。5社が挑む新基準

宇宙空間から地球を見つめる無数の小型衛星。しかし、そこから送られてくる膨大なデータは、カメラの特性や機体の経年劣化によって品質にばらつきが生じてしまう。どれほど高頻度で画像を撮影できても、データ同士の基準が揃っていなければ、ビジネスの現場で正確な判断を下すことはできない。

この「データの不揃い」という見えない壁を打破し、宇宙の情報を誰もが安心して使える共通のインフラへと昇華させる。日本の宇宙産業を牽引する5社が結集し、新たな基準づくりへの挑戦が本格的に始まった。(文=SpaceStep編集部)

小型衛星の実力を引き出す。評価手法の確立

2026年3月19日、株式会社アクセルスペースをはじめとする日本の宇宙企業や研究機関など5社は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が公募する「宇宙戦略基金(第二期)」において、「衛星データ利用システムの開発・実証環境整備」の事業に採択されたと発表した。

本プロジェクトに参画するのは、代表機関を務める一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)のほか、株式会社パスコ、株式会社New Space Intelligence、株式会社アクセルスペース、株式会社Synspectiveの5社である。

(引用元:PR TIMES

近年、低コストで開発できる小型衛星の利用が急速に進んでいるが、ビジネスへの実装には大きな課題があった。衛星ごとの機体差や運用期間の経過によって生じる、データ品質や精度のばらつきである。これらを修正し、複数の衛星データを組み合わせて活用するためには、高度な専門知識と地道な補正作業が必要とされていた。

この状況を改善するため、5社は国産小型衛星に最適化されたデータの一元的な評価・校正・検証・補正手法の構築に挑む。各社の役割は明確に分担されており、RESTECが全体統括を担い、パスコが光学センサの評価・校正・検証・補正手法(画質)の開発を、New Space Intelligenceが光学センサの評価・校正・検証・補正手法(画質)の開発を、アクセルスペースが光学センサーの校正検証手法の開発を、SynspectiveがSAR(合成開口レーダー)センサーの校正検証手法開発を担当する。大型衛星のノウハウを応用した精度向上策を開発するとともに、衛星データの利用者向けに解説書を作成し、2030年を見据えて誰もが質の高いデータを扱える環境の整備を進めていく。

信頼性が市場を拓く。競争力を高める共創

多くの小型衛星が宇宙に放たれるようになった現在、ビジネスの成否を分けるのは打ち上げた機体の数ではない。取得したデータをいかに信頼できる状態に整え、あらゆる企業にとって使いやすい共通のインフラにするかが問われている。

農業の収穫量予測やインフラの監視、災害時の被害状況の把握など、衛星データはあらゆる産業に革新をもたらすポテンシャルを秘めている。しかし、企業がそれを経営判断の材料として組み込むためには、データの品質が常に一定であり、客観的な基準で評価されているという「信頼性」が何よりも重要になる。天候に左右されないSAR衛星と、詳細な色や形を捉える光学衛星。それぞれの強みを持つデータを共通の評価基準で補正し、シームレスに組み合わせて利用できるようになれば、地球上のあらゆる変化を途切れることなくモニタリングすることが可能になるだろう。

個々の企業が独自の基準でデータを販売するのではなく、国と主要なプレイヤーが連携して共通の評価・校正の枠組みを構築することは、宇宙データという新しい資源を社会に定着させるための強靭な土台となる。さらに、企業の垣根を越えてそれぞれの知見を有機的に結びつけるこのオープンなアプローチは、国産小型衛星データの国際的な競争力を高める上で極めて有効だ。

宇宙から得られる情報が、専門家の研究対象から、実体経済を動かす「確かな共通言語」へと変わる。品質という見えない価値を地道に磨き上げるこの挑戦は、地球規模の社会課題を解決し、日本の宇宙産業を次なる成長ステージへと導くための、大きな飛躍への足がかりとなるはずだ。