海外でエネルギーや産業インフラ向けのプラント事業を手掛ける日揮グローバルの中で、宇宙領域に特化した「宇宙エンジニア™」。皆さんご寄稿のもと、日本が宇宙領域において抱えている課題や挑戦を発信する当連載。今回は、2022年フランス・パリで開催された国際宇宙会議IACの様子をお届け。ブロンズスポンサーとして展示ブースを設置して見えた現場の温度感を追体験いただきたい。
(リード=SpaceStep編集部、本文=日揮グローバル 宮下俊一さん)
今回の宇宙エンジニアは

日揮グローバル株式会社 Engineering DX推進室
宮下 俊一さん
1998年入社。サウジアラビア・オマーン・マレーシア・ベトナムなど多くの海外プロジェクトにてOil & GasプラントのEngineeringに従事。2018年よりIT Grand Plan2030策定・推進メンバー、2020年から月面プラント開発責任者を務め、2024年からEngineering DX推進室の室長。Engineering DXを実現した未来の姿として、Lunar Smart Community® (Lumarnity®)を提唱し、宇宙エンジニア™として開発管掌・プロジェクトディレクターを務める。
IAC (International Astronautical Congress)は、政府機関・宇宙機関、産業界、大学、宇宙関連団体等が参加する世界最大の宇宙業界の国際会議です。IAC2022で第73回目を迎え、フランス・パリでの開催となりました。宇宙エンジニア™としては、IAC2021(UAE・ドバイ)参加に引き続き、2回目の参加となりました。
(※2021の様子は 連載第2回をご覧ください 宇宙の知が集まる「国際宇宙会議IAC」に初参加!~【連載】月へ挑む、宇宙エンジニアたち(第2回))
今回も23ページの参加報告書から抜粋し、公開可能な修正を加筆しました。普段はなかなか触れる機会のない国際宇宙会議の一端を垣間見る追体験を通じて、皆さまにも学び・希望・勇気が少しでも届くと幸いです。
IAC (International Astronautical Congress) 2022
開催期間: 2022年9月18日-9月22日
開催場所: Paris Convention Center(フランス・パリ)
公式発表: 参加者9,300人、参加国110カ国、展示数250
参加目的: ブース出展(ブロンズスポンサー特典)による日揮グローバルのプレゼンス向上
最新の国際宇宙計画・各国の動向の把握、及びニーズの探索
月面推薬プラント、月面基地等に関わる最新技術・情報の入手
当時フランス首相に任命されて間もないエリザベット・ボルヌ首相より、開会挨拶がありました。表情を一切変えず、終始一貫フランス語。スピーチが終わると最前列に陣取っていた軍人が一斉に立ち上がり、ボルヌ氏に続く形で退場。強い意志を持った女性であることが伝わってきました。
エリザベット・ボルヌ首相の挨拶
IACを主催する団体IAFの代表、パスカル氏の挨拶の中で、ブロンズスポンサーとして日揮グローバルの英語名「JGC Corporation」が読み上げられました。さらに会場入り口でのスポンサー表示や、プログラム冊子(今回から紙ではなくPDFの配布となった)への掲載など、人の目に触れる機会は格段に上がったと思います。 IAC後、フリーの宇宙ライターのこはるさんがSNSで投稿するなど、認知度向上に繋がった実感もありました。
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ブロンズスポンサー特典の一つとして、3m x 3m = 9㎡の展示スペースを確保しました。展示ブースで必要となる机、イス、ディスプレイやショーケース、電源などを専用サイトから予約し、展示会場オープンの前日に自分たちでセッティングするという段取りでした。
展示場オープン前日の朝8時に会場に入ると、設営の進捗はざっと30%~40%ほど。本当に翌日にオープンできるのか心配になりました。我々の展示ブースの場所に向かうと、かろうじてパーティションとフレームで区切られているだけ(写真中央)で、注文していたテーブルやイス、ディスプレイなどは影も形もありませんでした。
展示ブースオープン前日の状況
明日の開催は無理かもしれないと途方に暮れながらも、何とか現場担当者を捕まえると「午後2時にはすべてそろう」との説明が。待っていてもしょうがないので、セーヌ川のほとりをとぼとぼと歩いて一旦はホテルに戻りました。
午後におそるおそる展示ブースに戻ると、発注していた机、イス、マガジンラック、そしてディスプレイが発注数量の2倍で届いていました。大は小を兼ねるということで、必要なセットアップが無事に完了できました。
オープン後は順調。100部用意していった会社のパンフレットが、最終日には無くなってしまいました。パンフレットを持ち帰ってくれたのは2~3組に1組程度だったので、推定訪問者数は30~50人/日。
「JGCはなんの会社なのか?」と興味を持ってくれる人が大半な一方で、ちらほら日本人も結構足を止めてくれ「JGCって日揮のことですか!」と、日本人に対してはJGCロゴが浸透過程であることを実感しました。JAXAとの協業内容を説明すると、多くの人が話を興味持って聞いてくることが気付きでした。聞かれた声としては「エンジニアリング会社が月面って言っている時代になったとは“so serious”だ」や「良い提案が出来たらNASAに持ってきてくれ」といったポジティブなものが多数でした。
JGC展示ブースでの様子
JAXAブースの展示は少なめでしたが、時々イベントがありました。星出宇宙飛行士やロケットの開発について講演がなされ、その際はブースには人が集まっていました。また、JAPAN Nightというイベントも企画され、桝に獺祭を入れて配っていました。そのイベントは大人気で、このブースに人が溢れるほど集まっていました。
JAXAブース
IACへの出展に、宇宙エンジニアたちはどう感じたのでしょうか。出展に参加したメンバーからの感想をまとめました。
昨年のIAC2021(UAE・ドバイ)に引き続き、今回で2回目の参加となりました。右も左も分からず飛び込んだ昨年に比べると、若干の余裕をもって参加できたと思います。 前回のおもてなし精神に溢れた開催に比べると、どこかまとまりが無く、一体感に欠けていたような気がします。しかしこういった状況の中でこそ、日本企業が調整役・潤滑油として何かできることがあるのではないかと思いました。
一方で、JGCブースを出展するという新たなチャレンジもあり、こちらはブース出展自体が初めてのことに加えて、現地フランスのイベント会社とのやり取りも煩雑で、本当にちゃんとブースは完成するのか当日までドキドキしました。
JGC展示ブースは学生・企業人を中心に一日30~50人に来訪頂きました。そのほとんどがJGCを知らない人でしたが、日本で準備して持参したロールアップバナーや紹介動画、会社のパンフレットを駆使し、JGCの本業から、月面プラントユニットの目指すLumarnity®を紹介・周知することができました。
展示ブースを出すことで、各国の宇宙省庁関係者、スタートアップ、教授や学生といった様々な方がブースを訪れて下さり、ブース出展することの効果を肌で感じることができました。ムーンビレッジやNASAから声を掛けられる事もあり、ブース出展は弊社の認知度上昇に確実に役立っていたと思います。来年以降も継続してブースを出展し、数年以内にはNASAやムーンビレッジが毎年動向を確認しに来るくらいの成果を展示できるよう、日々の業務に勤しみたいと思います。
昨年に続き、展示場は衛星系通信系が多い印象でした。講演会の方で気づいたのは、日本のいわゆる学会ほど堅苦しくはなく、同じセッションの中に硬い研究成果を報告するものもあれば、私はこんなことを考えているという主張のようなレベルのものまで様々であるため、発表のハードルはそれほど高くないと思いました。また、JAXAブースでは沢山の日本企業が間借りをして展示をしており、昨年には居なかったプレーヤーが今年は居ると感じられました。海外の会社は様々なサービス(打上、輸送など)の提供をしているブースもあるが、日本は技術特化型のように感じました。
一番の収穫は、なかなか名刺をくれないと言われているNASAのケミカルエンジニアから名刺をもらったことです。彼らはISSでのごみを再生有効利用しようとしている研究をしているのですが、これが当社が取り組む農水省の閉鎖循環型の研究と親和性が高いと感じ、説明をしたところ「連絡をくれ」と名刺をもらうことができました。今後、チームで論文を分析して親和性を見出し、NASAへのアプローチ方法を考えてみたいと思います。
英語の面白い使い方があったので紹介します。とある講演会場では講演者が集まっていなかったのか、講演前に司会が「Are you a speaker?」と確認をしていました。ほとんどの人は「No.」というだけでしたが、とある人は「No, as far as I know(いいえ、私の知る限りでは)」と言って笑いを取っていました。
カンファレンス後の夕食会で隣の人に「あなたは彼ともう何か契約をしているの?」と聞かれたので、早速「No, as far as I know」と使ってみたところ、笑いを取ることができました。使いやすいフレーズだと思うので、是非使ってみては如何でしょうか? (つづく)