こんにちは!宇宙を身近にする女性コミュニティ「コスモ女子」です。
2026年4月1日、約半世紀ぶりに人類は月へ歩みを進めましたね!「オリオン」という宇宙船に宇宙飛行士4名を乗せて、月の近くまで飛行する「月周回飛行」が実施されました。
今回はそれに関連して、月面着陸をテーマにした「映画」から宇宙用語を学んでいきます!私が選んだのは、2024年7月19日に日本公開された映画『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』(原題:Fly Me to the Moon)。
すでに月面着陸は事実であることが証明されていますが、本作は“月面着陸捏造説"を大胆にエンターテインメント化した、笑いとスリルとロマンスが絶妙に絡み合うハリウッド映画。
その面白さと、宇宙用語の両方をたのしくお伝えします!(語り手=コスモ女子 塔本愛さん、編集=SpaceStep編集部)
お話いただいたのは
コスモ女子 代表
塔本 愛 さん
舞台は1969年のアメリカ。
人類初の月面着陸を目指す国家的プロジェクト「アポロ計画」がスタートしてすでに8年が経過していましたが、失敗続きのNASAに対し国民の関心は薄れ、予算だけが膨らみ続ける最悪の状況にありました・・・。
事態を打開すべく、アメリカ大統領、ニクソン氏の側近・モー(ウディ・ハレルソン)は、ニューヨーク出身のPRマーケティングの敏腕プロ、ケリー(スカーレット・ヨハンソン)をNASAに招き入れます。
(引用:ソニー・ピクチャーズ 映画 YouTube公式)監督は自ら「宇宙オタク」を自認するグレッグ・バーランティ。主演はスカーレット・ヨハンソンで、本作ではプロデューサーも兼任。共演にはチャニング・テイタム、そして物語のキーマンとなる政府関係者役でウディ・ハレルソンが名を連ねています
「宇宙飛行士たちをビートルズ以上に有名にする!」と宣言したケリーは、本物のNASAスタッフにそっくりな役者たちをメディアに登場させる"偽"のイメージ戦略を展開。
大胆なPR作戦は実直で生真面目なNASAの発射責任者・コール(チャニング・テイタム)の強い反発を受けますが、アポロ計画は徐々に全世界の注目を集めていきます。
そんな中、モーからケリーにある衝撃的な極秘ミッションが言い渡されます。
「万が一に備え、月面着陸のフェイク映像を撮影しておけ」
失敗が絶対に許されないこのミッションに、ケリーはアームストロング船長の代役となる俳優や撮影監督を極秘に雇い、NASAのケネディ宇宙センター内部に作られた"偽の月面"でのフェイク撮影を密かに進めていきます。
仲間の成功を信じるコールは猛反対し、2人の対立はますます激化。
そんな最中、ついにアポロ11号は発射の時を迎え、世紀の月面着陸へのカウントダウンが始まります――。
アポロ11号の月面着陸シーンの再現(ケネディ宇宙センターにて撮影)
この映画最大の魅力は、歴史の"もしも"をユーモアと緊張感をもって描き切るオリジナル脚本!
長年くすぶり続けた都市伝説を笑いのネタに昇華しながら、冷戦という時代の空気、NASAの苦悩、メディアと国家の関係といったリアルな背景もしっかり描かれています。
架空のストーリー展開にもかかわらず、NASA(アメリカ航空宇宙局)の全面的な協力を得てつくられている点も見どころのひとつです。
前人未到のミッションに関わる人々の真摯で本気の姿勢を描きながら、笑いとロマンスの要素も盛り込んだ、気軽に楽しめる宇宙映画です!
管制室の再現(ケネディ宇宙センターにて撮影)劇中のメインテーマでもあるアポロ計画。あらためておさらいしましょう。
時代は第二次世界大戦後、1947年〜1989年ごろ。アメリカ・ソビエト連邦間には「冷戦(冷たい戦争)」と呼ばれる核兵器発射の緊張が高まる対立がありました。その中で両国は、宇宙開発を通し、技術・軍事力・国際的威信も競い合います。
そのさなか、1961年5月。アメリカのジョン・F・ケネディ大統領が「1960年代が終わるまでに人間を月に到達させる」と宣言。これが、アポロ計画と呼ばれる国家的有人月探査計画です。
NASAが主導し、1961年から1972年にかけて実施されたアポロ計画は、計6回の有人月面着陸に成功しており、最終的な総費用は1969年当時のドル換算で200億〜254億ドルにのぼると言われています。(現在のレートで4兆円!)
映画の冒頭で描かれるように、1967年1月27日にはアポロ1号で火災事故が発生し、3名の宇宙飛行士が命を落とすという痛ましい出来事もありました。
計画初期の数多くの失敗と悲劇を乗り越えて成功へと導いた英雄たちを称えるため、フロリダにはアポロ計画に携わった方々を顕彰する公園(Space View Park)もあります。

また、劇中でケリーがPR戦略で使用した写真は、アポロ8号が初めて宇宙から地球の姿を撮影することに成功した画像です。
月の地表から地球が昇ってくる「地球の出」を収めたこの写真は、「史上最も影響力を持った写真」とも言われています。
1968年12月にNASAの「アポロ8号」ミッションで撮影された"地球の出"(Credit: NASA)
今回の映画のテーマでもあるアポロ11号は、アポロ計画において人類初の有人月面着陸を成功させたミッションです。
1969年7月16日にフロリダ州のケネディ宇宙センターからサターンVロケットで打ち上げられ、約3日間の飛行の末に月周回軌道へ到達。
船長のニール・アームストロングと月着陸船操縦士のバズ・オルドリンが月着陸船「イーグル」で「静かの海」に着陸したのは1969年7月20日のことでした。2名は約21時間半を月面で過ごし、21.5キログラムの月の石を採取して地球に持ち帰りました。
(引用:NASA 公式YouTube)アームストロング氏・オルドリン氏の着陸の様子(42分ごろ)
その間、司令船操縦士のマイケル・コリンズは一人で月周回軌道上を飛行し続けました。
月面着陸の様子はテレビ中継により全世界約6億人が見守り、アームストロングが残した「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である」という言葉は今なお語り継がれています。
アポロ11号の後もアポロ計画は続き、1972年のアポロ17号をもって幕を閉じました。現在はその精神を受け継ぐ形で、再び人類を月へ送り込むことを目指すアルテミス計画が進められています。

ケネディ宇宙センターにて撮影。”The Eagle Has Landed”という言葉は「歴史的な快挙」という意味で
英語のイディオムとしても使われています。
宇宙映画というと、難解な専門用語や緊迫したシーンが続くイメージを持つ方もいるかもしれませんが、本作にはそういった敷居の高さがありません。
笑いながら気軽に楽しめる映画でありながら、宇宙開発に本気で取り組むNASA職員たちの真摯でアツい思いもしっかりと伝わってくる、そんな絶妙なバランスが魅力です。
なかでも印象的なのが、ケリーによるPR戦略の数々です。予算削減の危機にさらされたアポロ計画を国民の日常につなげるため、時計や歯磨き粉、食事など、誰もが日頃から目にし使うものを通じて宇宙を身近に感じさせていきます。
難しい技術や理念を語るのではなく、生活の中にある「身近なもの」を入口にして人々の心を動かしていくケリーの発想と行動力は、現代のマーケティングにも通じるものがあり、宇宙に詳しくない方にも刺さるシーンではないでしょうか?議員の支持と国民の注目を集めていくその手腕は見事の一言で、思わず見入ってしまいます。
(引用:ソニー・ピクチャーズ 映画 YouTube公式)
宇宙はまだまだ遠いものと感じている方も多いかもしれませんが、本作はそのイメージを軽やかに塗り替えてくれます。映画をヒントに、一人でも多くの方に宇宙を身近に感じてもらえるよう、コスモ女子としても啓発活動を続けていきたいと改めて感じました。
また、物語の後半に向けてテンポはぐっと加速します。打ち上げ直前までのドタバタ劇はハラハラと笑いが同時に押し寄せ、打ち上げ成功の瞬間の感動、月面に降り立ったときの達成感が、まるで自分もその場に立ち会っているかのように伝わってきます。
歴史的な事実として知っていても、思わず手に汗を握ってしまうのが、この映画の脚本の巧みさです。宇宙開発の苦労を超えた感動を、ぜひ映画で体感してください。
映画をきっかけに、実際のロケット打ち上げ見学やケネディ宇宙センターへの訪問を夢見る方も増えるのではないでしょうか。作中に登場するケネディ宇宙センターは現在も一般見学が可能で、ロケットの実機や管制室の再現展示など見どころが満載です。映画の余韻を胸に、ぜひ足を運んでみてください。
さらに、スカーレット・ヨハンソン演じるケリーの1960年代スタイルのファッションにも注目です!キャラクターの強さと華やかさを体現するファッションは、物語に彩りを添えています。宇宙ファンはもちろん、ラブコメやおしゃれが好きな方も楽しめる、幅広い魅力を持つ一作です。
宇宙への興味が少なかった方でも、きっとエンドロールが終わる頃には夜空を見上げたくなっているはず。まだご覧になっていない方は、ぜひ一度手に取ってみてくださいね。
(次回へつづく)