みなさんこんにちは!宇宙を身近にする女性コミュニティ「コスモ女子」です。
この連載では、私たちが宇宙を楽しむエピソードや取り組みを紹介しています。
第4回では映画「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」を題材に、宇宙の基礎知識を学びました。好評につき今回も「映画」から宇宙用語を学んでいきます!
紹介するのは、劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』。実は今作に大きく関わってくるのが、国立天文台野辺山。ここの巨大パラボラアンテナや衛星通信が物語にどう関わるのか。物語とともに、学んでいきましょう。(文=コスモ女子、編集=SpaceStep編集部)
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「名探偵コナン」劇場版第28作目となる、『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』は、長野県警の大和敢助警部と、ヒロインの父である探偵 毛利小五郎の2人をキーパーソンに据えた、シリーズ異色の作品です。普段は”迷探偵”として描かれがちな小五郎が、終始シリアスで有能な姿を見せる「大人路線」の展開も本作の大きな見どころとなっています。

威厳が伝わってくる映画ポスター (引用:劇場版名探偵コナン公式X)
10ヶ月前、大和は雪山にて、ある男を追跡していた際、男が放ったライフル弾が左目をかすめ、同時に発生した雪崩に巻き込まれ大けがを負います。その時、「何かを見た」という記憶だけが残ったまま、真相を失ったまま過ごしていました。
そして10ヶ月後の現在。長野県の国立天文台野辺山で、何者かが施設に侵入し、職員が襲われる事件が発生。大和は同僚の上原由衣とともに現場へ向かいますが、天文台の巨大なパラボラアンテナを目にした途端、左目の傷が疼きはじめます。それは、雪山で失われた記憶が再び動き始める合図でした。
主人公である名探偵、江戸川コナンと、友人たちである少年探偵団も長野へ向かい、複数の殺人事件と10ヶ月前の雪崩事故をつなぐ謎を追っていきます。やがて明らかになる真相は、情報収集衛星の通信を不正に傍受し、国家機密を盾に政府を脅迫するという大がかりな陰謀でした。
犯人は、国立天文台野辺山から移動観測車を盗み出し、そのパラボラアンテナで衛星通信を傍受。日米の軍事情報を含む機密情報を入手し、刑事訴訟法改正案の撤回を政府に要求していたのです。クライマックスでは、あの45m電波望遠鏡がまさかのかたちで事件解決に一役買います!
本作の魅力は、大和敢助という「失われた記憶」を抱えた主人公を取り巻く人間ドラマはもちろん、「衛星通信」や「天文台」といった実在する宇宙インフラが物語に巧みに融合している点にあります。
ここからは、劇中に出てくる宇宙関連用語について、解説をしていきます!
私たちは星を見るために望遠鏡を使いますが、野辺山の45m電波望遠鏡は少し役割が違います。これは宇宙を「見る」のではなく、「聴く」ための望遠鏡です。宇宙の星や銀河、ブラックホールの周囲からは、人の目には見えない電波が絶えず届いています。
野辺山の巨大なパラボラアンテナは、その微かな電波を集める巨大な“耳”。研究者たちはその信号を分析することで、星が生まれる現場やブラックホールの周辺など、可視光では見えない宇宙の姿を描き出しています。映画の中で巨大アンテナが存在感を放っているのも、この「宇宙の声を聴く装置」という背景を知ると、また違って見えてきます。
本作の舞台となるのは、長野県南牧村にある「国立天文台 野辺山宇宙電波観測所」。標高1350mの高原に位置し、「ミリ波」と呼ばれる電波を観測する世界最大級の45m電波望遠鏡を擁する、日本の電波天文学の「聖地」とも呼ばれる施設です。

山の迫力にも負けない45m電波望遠鏡(引用:国立天文台)
宇宙から届く電波はとても微弱なため、電波望遠鏡には「パラボラアンテナ」という大きなお椀型の構造体が使われています。このパラボラ(放物面)形状が電波を一点に集め、わずかな信号も受信できる仕組みです。野辺山の45mアンテナは精密な観測装置として知られ、映画でもその圧倒的な存在感を感じます。
ちなみに、野辺山は一般公開されており、入場無料で見学できます!コナンがきっかけで聖地巡礼に訪れるファンもいるんだとか!?
本作のキーワードとなるのが「情報収集衛星」、英語ではIGS(Information Gathering Satellite)と呼ばれます。
情報収集衛星のイメージ図(上:レーダ衛星、下:光学衛星)引用:内閣官房(Cabinet Secretariat)
日本のIGSは、内閣衛星情報センターが運用する政府の偵察衛星です。2003年に初の打ち上げが行われ、現在は複数機が地球を周回しています。主な用途は安全保障上の情報収集で、光学センサーや合成開口レーダー(SAR)を搭載し、地上を高解像度で撮影する能力を持っています。その運用内容は機密扱いであり、詳細なスペックは公開されていません。
劇中では、犯人がこのIGSの「通信」を不正に傍受し、機密情報を入手するという設定です。実際には通信の暗号化や保護措置がとられているため、現実のIGS通信を傍受することは極めて難しいとされています。しかし、フィクションならではの大胆な発想や緊張感あふれる展開を楽しめるのが、映画の醍醐味ですね。
通常の衛星通信は、地上局からの電波を衛星が中継して別の地上局に届ける仕組みです。その電波は広い範囲に届くため、理論上は適切なアンテナさえあれば受信できてしまいます。
劇中でも、移動観測車に搭載された大型パラボラアンテナを使って衛星通信を受信するシーンが描かれています。多くの衛星通信では暗号化や認証が施されているため、受信できても内容を読み取ることは通常できないのですが、それでもこのアイデアには電波天文学の知識が巧みに活かされていて、ストーリーに説得力を与えています。
電波望遠鏡が"宇宙から届く声"を聴くためのアンテナなら、犯人が行っていたのは"聴いてはいけない声"を盗み聞きすること。同じパラボラアンテナでも、科学のために使うか、犯罪のために使うかで意味はまったく変わります。──そのコントラストがなんとも映画的です!
今回のコナン映画は、国立天文台野辺山という普段なかなか意識しない「宇宙研究施設」が舞台になったことで、「こんな場所が日本にあるの!?」という驚きとともに、電波天文学への親しみが自然と湧いてきました。
コナンシリーズはこれまでも、実在の場所を巧みに舞台に使ってきましたが、宇宙研究施設という切り口は今回ならではの新鮮さがあります。
今作は隻眼の刑事・大和敢助の過去と現在をめぐる因縁だけでなく、いつもは”迷探偵”として描かれがちな毛利小五郎が、終始眠らずシリアスに推理を重ねる「頼れる一面」を見せてくれるのも大きな魅力です。
長野県警組の面々も物語に深く絡み、刑事ドラマさながらの緊張感が最後まで続きます。派手なアクションだけでなく、じっくりと積み重なる人間ドラマを味わいたい方にこそ観てほしい一作です。
コナンや、少年探偵団の一員である 灰原哀たちの活躍、そして巨大パラボラアンテナが物語のキーとなる場面は演出がおもしろく、「さすが哀ちゃん!」となりました(詳細はぜひ配信でご確認ください)。普段まったく意識しない電波天文台という「宇宙へ耳を澄ます観測施設」が、事件の緊張感を支えているという事実も、映画を通して初めてリアルに感じられました。
宇宙は「遠い夢の世界」だけでなく、こうして地上のドラマにも深く絡んでいる――そんな視点をコナンから学べた気がします。
宇宙というと、ロケットや人工衛星を思い浮かべる人が多いかもしれません。でも今回の主役は、地上から宇宙へ耳を澄ます巨大な電波望遠鏡でした。
コナン映画を楽しんだあとに野辺山を訪れれば、「あのアンテナが宇宙の声を集めているんだ」と、映画とはまた違う感動がきっと待っています。エンターテインメントをきっかけに宇宙を身近に感じられる、そんな作品でした。
<参考>
・国立天文台 野辺山宇宙電波観測所
・45m電波望遠鏡
・劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』概要
・内閣衛星情報センター
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