海外でエネルギーや産業インフラ向けのプラント事業を手掛ける日揮グローバルの中で、宇宙領域に特化した「宇宙エンジニア™」。皆さんご寄稿のもと、日本が宇宙領域において抱えている課題や挑戦を発信する当連載。
第5回は、小学校低学年向けに開催されたイベント「宇宙エンジニア™が届ける 2050年月面の旅」のレポートをお届け。次世代の宇宙人材を育てるために、宇宙エンジニア™は何を思うのか。(リード=SpaceStep編集部、本文=日揮グローバル 宮下俊一さん)
今回の宇宙エンジニアは

日揮グローバル株式会社 Engineering DX推進室
宮下 俊一さん
1998年入社。サウジアラビア・オマーン・マレーシア・ベトナムなど多くの海外プロジェクトにてOil & GasプラントのEngineeringに従事。2018年よりIT Grand Plan2030策定・推進メンバー、2020年から月面プラント開発責任者を務め、2024年からEngineering DX推進室の室長。Engineering DXを実現した未来の姿として、Lunar Smart Community® (Lumarnity®)を提唱し、宇宙エンジニア™として開発管掌・プロジェクトディレクターを務める。
今回は宇宙エンジニア™の取り組みである「社会との繋がり(コラボ)」の特別編で、3月28日(土)に実施した教育イベント「宇宙エンジニア™が届ける 2050年月面の旅」をレポートします。
このイベントは、浜松町の「宇宙の店」を会場に、小学校低学年の親子向けに開催しました。月面のおはなし、スマホVRの旅、月面のクイズの3部構成で約1時間、月への興味を育みます。
まずは月面のおはなし。月の特徴と2050年の将来像(図1)を、子供たちに質問を投げかけながら対話形式で学びます。
宇宙に詳しい子も、そうでない子どもたちも、具体的に考える事で自分事化され、普段は遠くて小さく見える月の話が身近に感じられるようになります。
図1 Lumarnity®構想図
月に興味を抱いてもらった後は、スマホVRゴーグル(Lumarnity® 360 )を使って、2050年の月面に降り立つ疑似体験をします。ペーパークラフトを組み立て、レンズを差し込むと簡易VRゴーグルが完成。
スマホでYouTubeアプリを開き、Lumarnity®の3D空間が楽しめる360°映像を投影。ゴーグルにスマホをかざすと、レンズで拡大され、没入感が倍増したVRゴーグルが完成です。 360°映像なので、縦横無尽に顔を動かして楽しんでもらえます。月の南極にあるクレーターの底からスタートし、月面プラントを自動運転のローバーに乗って見学してもらい、2050年の月面旅行を先取りして体験してもらいました。
360°映像のため、頭の向きを縦横無尽に動かして楽しんでくれました
最後の月面のクイズは、月面プラントを設計するエンジニアリング体験です。プラント建設に必要な機能の順番を考える、ちょっと難しい問題ですが、先ほどのVR体験で観た映像にヒントがあります。
また、子どもたちは、自分が考えた順番の整合性を保護者へ説明します。設計ロジックを考え、ステークホルダーを説得する。まさにエンジニアの仕事の疑似体験です。正解発表では、子どもたちがガッツポーズして喜ぶほど盛り上がっていました 。
今回は2歳から9歳と小さいお子様でしたが、「月に行ってみたいですか?」の質問には、7割程の子どもたちが手を挙げていました。ちなみに、最年少の2歳児も手を挙げており、私の質問と共に手を挙げるので私の真似をして挙げているようにも見えましたが、実は本当に行きたい意思表示なのではないでしょうか!?
「月がどんなところか?」の投げかけにも、それぞれ回答があり、「クレーターが多い、大気圏が無い」など、専門的な用語も飛び交っていました。また、月の水の活用方法では、「月の水で泳いでみたい!」なんて、エンジニア目線では贅沢な意見も、子どもならではの発想で刺激的でした。加えて、「火星に住むことは考えられてますか?」と、月の更に先の未来の質問もあり、子どもたちに頼もしさも感じました。
今回の参加対象者は、2050年に30歳前後になり世界をリードする世代です。その世界のリーダーにはSTEM教育※が必須であり、最前線のエンジニアの挑戦が、子どもどもたちの自発的な学びに繋がると考えています。
そこで、日揮グローバル株式会社のパーパスやバリュー(図2) や、実際のエンジニアリング業を知ってもらう機会を「宇宙」をテーマに提供しています。
※STEM教育:科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の4分野を横断的・統合的に学ぶ教育
図2 日揮グループのパーパス & バリュー
また、私はあくまで自称ですが、「エンジニアの代表」と自己紹介しています。そして、DX (Digital Transformation)とSX (Space Transformation)を起こし、エンジニアを更にアップグレードすることが私のミッションです。宇宙エンジニア™が挑んでいる「ワクワク感」と共に、エンジニアの素晴らしさや面白さを次世代に伝え、地上のあらゆる職業が月で必要になる2050年、次世代のエンジニアたちと一緒に更なる未来を創造することを目指しています。
今回はSpaceStep編集部もイベントに参加し、和やかな雰囲気に参加者の皆さんも満足げな様子でした。イベント後に親子へインタビューすると、「ゴーグルを作ってスマホで見るのがたのしかった」という声が多数。
子供たちは、五感を使った体験を特に楽しんでいたようです。 イベントを通じて「宇宙飛行士になりたい」「もっと月のことを知りたい」といった意欲を見せる子も。
保護者からは、大人が聞いても興味深い、現場のリアルな話が聞けたことも評価ポイントだったようです。月に行くための具体的な方法、温度差への対策、宇宙服、国際的な役割分担など。
とある保護者からは、「宇宙を“勉強”としてではなく、自然に興味を持ってくれたらいいですね。たとえ宇宙飛行士にはならなくても、未来に夢のあることを宇宙から学んでくれたらうれしいです」と思いの溢れるコメントも。
つい先日、宇宙船「オリオン」に乗った宇宙飛行士たちが、約半世紀ぶりの月へ向かいました。「人類が再び月へ行く」という時代に、私たち大人が、子どもたちへ希望をつないでいきたいですね。(つづく)