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2026.02.25

他業界コラボの聖地「宇宙の店」との共創~【連載】月へ挑む、宇宙エンジニアたち (第3回)

地上から月面まであらゆるプラント設計・建設に携わってきた日揮グローバル。同社では、日本の月面進出において技術革新を進め、宇宙領域に特化したエンジニア「宇宙エンジニア™」たちが活躍中。SpaceStepでは、日本が宇宙領域において抱えている課題や挑戦を発信すべく、宇宙エンジニア™寄稿のもと連載をスタート。

第3回は、展示会出展を契機にコラボが始まった「宇宙の店」との連携について語っていただく。講演やワークショップから商品化まで段階的に展開し、異業種コラボで宇宙を身近にする実践例を紹介する。(リード=SpaceStep編集部、本文=日揮グローバル 宮下俊一さん)

今回の宇宙エンジニアは


日揮グローバル株式会社 
Engineering DX推進室
宮下 俊一さん

1998年入社。サウジアラビア・オマーン・マレーシア・ベトナムなど多くの海外プロジェクトにてOil & GasプラントのEngineeringに従事。2018年よりIT Grand Plan2030策定・推進メンバー、2020年から月面プラント開発責任者を務め、2024年からEngineering DX推進室の室長。Engineering DXを実現した未来の姿として、Lunar Smart Community® (Lumarnity®)を提唱し、宇宙エンジニア™として開発管掌・プロジェクトディレクターを務める。

第2回では、普段は触れる機会のない宇宙開発の内容や国際会議でのレポートの発信を開始しました。宇宙を身近にする1st Stepとして、『SpaceStep』のテーマ「宇宙ビジネスを身近にする」という点を考慮すると、読者一人ひとりが“自分ごと”として捉えられるテーマの発信も必要であると考えました。ついては、当初の2大テーマ「最先端の宇宙(月面開発)」、「世界の動向(学会)」、に「社会との繋がり(コラボ)」を加えて、宇宙エンジニア™の3本柱で届けます。

国際宇宙産業展ISIEX出展。一本の連絡が道を開いた

エンジニアリングとは、多分野にわたる人の知恵を結集・結合し、一定の課題を達成する科学技術的な活動であるといえます。 この活動において我々日揮グループの価値(Value)は、実際に「モノ」を創造するまで「完遂」することです。

そこで、長期計画の月面開発において、何か小さな具現化が出来ないかを考え続けていました。考え続けている姿勢がセレンディピティ(Serendipity)を呼び込み、出会いの機会は突然に現れました。

2023年2月、主催社の日刊工業新聞社からお誘いを受け、日揮グローバルは国際宇宙産業展ISIEX に出展しました(図1)。私は、当時宇宙政策担当大臣の高市早苗議員が挨拶される特別講演に参加する為、会場の東京ビッグサイトに向かっていました。

図1 国際宇宙産業展ISIEX出展ブース

電車で移動中、他の宇宙エンジニア™から、「国際宇宙産業展ISIEXの会場に宇宙の店※が出展(図2)している」との情報が。私が気にしていた「宇宙航空ガチャ」も販売されているとの連絡が入りました。

※宇宙の店:「宇宙を身近に」を掲げ、宇宙食やJAXA・NASAグッズなど宇宙関連商品を販売する専門店。宇宙関連イベントの開催場所としても使われる。

プラントを中心にしたLumarnity®構想(参照:第1回)を小さくても最初に「モノ」にしたい、その選択肢の一つとして浮かんだ案が、この宇宙航空ガチャでした。JAXA筑波宇宙センターで販売されていたロケットや衛星を立体化したカプセルトイです。そのLumarnity®版がつくれないかとの思い付きの私の発言を、宇宙エンジニア™が覚えていて連絡してくれたのです。参加目的である大臣の力強い講演を聞いた後、直ぐに宇宙の店の出展ブース(図2)に駆け付けました。

会場に居た宇宙の店の担当者と話したところ、私の巨大なプラントを作って来た奢りと、小さなガチャを甘く見ている事に気づかされました。ガチャの具現化は簡単では無く、金型の製作等々の難関が立ちはだかり、商品化まで2年間はかかり、市場性も鑑みた第一印象として、実現性はかなり低いとの回答でした。

図2 宇宙の店出展ブース

改めて宇宙の店を紹介すると、株式会社ビー・シー・シー が運営する宇宙食・宇宙グッズのショップで、本店は浜松町駅前の世界貿易センタービル南館5階です。「宇宙を身近に」を コンセプトに、宇宙に関する「コト」「モノ」を通じ、この地球を含む広大な宇宙へと関心を持ってもらうためのきっかけづくりを行っています。そこで、この出会いを活かし、「コト」「モノ」のコラボを模索する事にしました。

  (写真引用:宇宙の店

ワークショップ・講演が次展開を生む

ガチャの実現は難しいが、まずはスモールスタートで「コト」のコラボを始める事にしました。宇宙の店では、宇宙に関する様々なテーマのワークショップを通じ、子供たちに宇宙への更なる興味付けが出来る場を提供しています。子供たちだけでなく、大人の方に対しても宇宙に携わる方による講演を通じてより深く学べる場を提供しているとのことで、はじめの一歩として、大人向けの宇宙エンジニア™の講演をさせてもらいました(図3)。

図3 「宇宙の店」での講演風景

振り返るとすべてはここから始まっており、 BtoBビジネスの総合エンジニアリング会社が接する機会の少ない一般の方と、講演を通じた新たな機会が開けました。宇宙エンジニア™の取り組み自体が、教育とエンターテイメントとの相性が良く、会いに行けるエンジニアに近いコンセプトで直接反響を受けながら、下記の4回の大人から子供までの講演へと発展し、今後も継続していくことになりました。ついては、浜松町の宇宙の店は、宇宙エンジニア™の聖地と言っても過言ではありません。

○過去のイベント内容

  • 第1回 2023年5月26日(金) : 月で暮らす未来はすぐそこに?日揮グローバルの考える月での長期滞在 ~月面スマートコミュニティ『Lumarnity®』~
  • 第2回 2024年2月10日(土) : 月面スマートコミュニティ『Lumarnity®』グッズ発売決定!記念講演、子供向けの内容に変貌!「月の世界を体験!月面プラント旅行 ~月面スマートコミュニティ『Lumarnity®』~」
  • 第3回 2025年5月4日(日) : ノジマプログラミング教材『月面シリーズ』販売記念!「スマホで月面ローバー乗車VR & レゴ®ロボットで自動運転」
  • 第4回 2025年7月12日(土) : ノジマプログラミング教材『月面シリーズ』販売記念第2弾!「スマホで月面ローバー乗車VR & レゴ®ロボットで自動運転」

巨大プラントを作ってきたエンジニア、小さなクッキーに挑戦

「コト」で築いた信頼関係に基づき、次は「モノ」のコラボを検討しました。

宇宙の店の「モノ」の販売は、様々な宇宙関連グッズに触れることで、宇宙をより身近に感じてもらいたい、という想いに基づいています。宇宙・サイエンスへと興味を抱くきっかけを作り、次代を担う子供たちに宇宙飛行士、宇宙関連の技術者、研究者などの宇宙関連の仕事を目指す礎となる場を提供しています。 

主力商品は宇宙食、ロケット・衛星に関わるグッズであり、月に関わる商品は限定的でした。そこで、月面開発をテーマにした商品化の市場ニーズと、シナジー効果の深堀り検討を続けました。

「モノ」のコラボの継続議論の末、はじめの一歩としての宇宙の店からの提案は、まさかのクッキー販売でした。巨大な構造物を作り続けてきたエンジニアとしては、完全に想定外の提案でした…。

しかしながら、これぞ他業界コラボの神髄と前向きに捉え、社内承認の調整を開始しました。総合エンジニアリング会社がクッキーへのロイヤリティ契約を結ぶ、この前代未聞の挑戦に、社内には月面開発と同じく乗り越えないといけない様々な壁がありました。

その壁を一つずつ関係各位と協力して乗り越え、宇宙の店との出会いからちょうど1年後の2024年2月、遂に月面開発COOKIES (Lumarnity ®グッズ)の販売を開始しました(図4)。


図4 月面開発COOKIES (Lumarnity ®グッズ)

宇宙の店本店&オンライン・科学館・宇宙イベントで販売されており、2025年10月時点の累計販売数は15,000箱を超え、スマッシュヒットとなっています。

なお、難しいからこそエンジニアが挑戦する意味があると考えており、私の本命のガチャ実現への挑戦は続いています。(第4回へつづく)