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2026.02.02

宇宙から描く日本の輪郭。アクセルスペースと国土地理院が進めるデジタル地図更新の「自動化」

私たちが日常的に利用する地図アプリやカーナビ。その情報の鮮度は、いかにして保たれているのだろうか。かつては測量士が足で稼いでいた情報の更新は今、遥か上空からの「眼」によって劇的な進化を遂げようとしている。

2026年1月、日本の小型衛星のパイオニアである株式会社アクセルスペースが、国土地理院測量行政を司る、国土交通省の特別機関)への衛星画像提供を継続すると発表した。これは、宇宙技術が日本の国土管理という巨大なインフラの一部として、完全に定着したことを告げるニュースである。(文=SpaceStep編集部)

国産衛星網が捉える「国土の変化」、AI連携で加速する地図整備

今回発表されたのは、国土地理院が進める「電子国土基本図」の整備・更新プロジェクトに対する、アクセルスペースの地球観測プラットフォーム「AxelGlobe(アクセルグローブ)」の継続採用だ。電子国土基本図とは、日本の国土を統一規格で表した「デジタル形式の基本図」であり、ハザードマップや民間地図サービスの基礎データとなる、いわば「日本のデジタルツイン」の根幹である。

 (引用元:PR TIMES

広大な国土を持つ日本において、道路の新設や建物の変化をリアルタイムで把握し、地図に反映させる作業は膨大な労力を要する。そこで導入されたのが、衛星画像とAIを組み合わせた「変化抽出」の手法だ。アクセルスペースは、自社が運用する小型衛星「GRUS(グルース)」5機による観測網を活用し、画像の提供を行う。

このプロジェクトの技術的な要諦は、「頻度」と「品質」にある。GRUS衛星は、地球上の同一地点を2〜3日に一度という高頻度で観測できる能力を持つ。さらに、独自開発の画像処理技術「AxelGlobe モザイク」を活用することで、日本特有の課題である「雲」の影響を排除したクリアな合成画像を生成する。

 (引用元:PR TIMES

国土地理院は、これらの衛星画像をAIで解析し、過去のデータと比較することで「どこに新しい道路ができたか」「どこで建物がなくなったか」といった変化の箇所を自動で抽出する。これにより、広大な国土における地図情報の整備・更新作業の生産性は劇的に向上する。今回の契約継続は、2023年度からの取り組みが実運用に耐えうる成果を上げていることの証明と言える。

「地図は生き物」〜インフラ管理のパラダイムシフト

官民が連携して衛星データを活用し続けるという今回の決断は、宇宙データの利用が実証実験のフェーズを完全に抜け、実務を支える社会インフラとして定着したことを示唆している。

宇宙ビジネスの分野では技術の先進性が注目されがちだが、行政やインフラ管理の現場で求められるのは「継続性」と「安定性」だ。単発の契約ではなく、継続的な提供が決定したことは、アクセルスペースのデータ品質と供給体制が、国の基幹事業を支えるレベルにあると認められたことを意味する。これは、「宇宙技術の地上利用」における一つの成功モデルとして、他の自治体やインフラ企業への横展開を加速させる呼び水となるだろう。

また、地球観測プラットフォームAxelGlobeでは、最大2.5mの分解能(地上の約2.5m四方を1点として捉えられる解像度)というスペックの有用性が再評価された点も見逃せない。一般的に衛星画像といえば、車のナンバープレートまで判別できるような超高解像度が話題になりやすい。しかし、広域の国土管理において重要なのは、過剰な解像度よりも、広い範囲を頻繁に撮影し、面として捉える能力だ。アクセルスペースは、この「変化の把握」に特化した戦略的な解像度と頻度設定によって、コストと実用性のバランスが取れたソリューションを確立した。

さらに、日本の国土情報を海外の衛星事業者に依存せず、国産の独自衛星網で維持管理できる体制が整いつつあることも、経済安全保障の観点からも極めて重要だ。災害時や有事の際、自国の衛星で即座に状況を把握できる「データ主権」の確保は、国の強靭化に直結する。

宇宙から届くデータが、地上の地図を書き換える。かつてSFの世界の話だった技術は、いまや私たちの生活インフラを裏側で支える「当たり前のツール」として力強く稼働し始めている。