飲食チェーンが国内外で店舗網を拡大する上で、出店候補地の確保は重要な課題の1つだ。従来の用地探索では、不動産業者からの紹介や担当者による現地調査など、人手に頼る場面も多かった。そのため、市場に出ていない土地の情報を効率的に収集し、出店候補地を見つける手法が求められている。
こうした課題に対し、衛星データとAIを組み合わせた新たなアプローチが動き出した。2026年8月5日、株式会社WHEREとNECネッツエスアイ株式会社は、「丸亀製麺」などを展開する株式会社トリドールホールディングスに不動産AIツール「WHERE(ウェア)」を提供したと発表した。衛星画像から出店候補地を探索し、登記情報の取得や案件管理までを支援する仕組みは、飲食チェーンの店舗開発にどのような可能性をもたらすのか。(文=SpaceStep編集部)
▼宇宙ビジネスのトレンドを毎日掲載!
宇宙ビジネスを身近にする『SpaceStep』

(引用元:PR TIMES)
WHEREとNECネッツエスアイがトリドールHDに提供した「WHERE」は、衛星データとAIを活用し、市場に出ていない不動産の探索から地権者へのアプローチまでを一気通貫で支援するツールだ。
「丸亀製麺」を主力とし、国内外で2,000店舗超を展開するトリドールHDは、中期経営計画において出店力の強化を掲げている。2025年3月期の売上収益は前期比15.6%増の2,682億円を記録したが、今後のさらなる成長に向けて、人手に頼っていた用地仕入れ業務の効率化が求められていた。
本ツールの強みは、衛星画像を用いて空き地や駐車場、遊休地などを上空から探索できる点にある。希望エリアや対象の土地・建物などの条件を指定すると、候補物件数がリアルタイムで表示され、条件に合う物件をマップ上で確認できる。

(引用元:PR TIMES)
さらに、筆界※を地図上で直感的に確認できるだけでなく、登記情報や所有者情報、公図情報を迅速に取得できる。探索からスクリーニング、案件管理やアプローチ記録までを一元化することで、用地仕入れの工数を圧縮する。
株式会社トリドールホールディングス 店舗開発本部 本部長代行 大久保 勇 氏は、登記情報などを迅速に取得できる点を評価した上で、同ツールの活用を通じて用地選定を効率化し、確実な意思決定に基づく店舗出店を進めていくとコメントしている。
※筆界=登記上、土地と土地を区分する境界線を指す。
トリドールHDによる今回のツール導入で注目されるのは、衛星データの活用がインフラ監視などに加え、飲食チェーンの店舗開発にも広がっている点だ。
従来の店舗開発における用地仕入れでは、不動産仲介会社からの物件紹介や、担当者による現地調査など、人手を要する場面が多かった。しかし、このアプローチでは市場に公開されていない有望な遊休地を見逃しやすく、調査にかかる移動時間や人件費も大きな負担となっていた。その中で、衛星データとAIで未活用の土地を上空から網羅的にスクリーニングする手法は、従来の受け身の姿勢を脱し、能動的でデータに基づいた店舗開発へと転換させる契機となるだろう。
また、衛星データとAIを組み合わせた技術が、飲食チェーンの店舗開発を支援する業務ツールとして活用されている点にも注目したい。NECネッツエスアイは、全国規模のサポート網を生かし、店舗DXから現場運用までを包括的に支援する方針だ。こうした支援体制は、IT人材の不足などの課題を抱える多店舗運営企業にとって、導入・運用を進める上での後押しとなる可能性がある。
今後は人流データや商圏分析機能の実装を通じて、出店候補地のスクリーニング精度をさらに高めることを目指す。飲食チェーンの店舗開発という身近な業務への活用は、衛星データの利用領域が広がる可能性を示す一例といえるだろう。
▼宇宙ビジネスのトレンドを毎日掲載!
宇宙ビジネスを身近にする『SpaceStep』