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2026.09.29

第二の月を構築せよ。小惑星が拓くインフラ

人類が月や深宇宙へ活動領域を広げる上で壁となるのが、地球からの莫大な物資輸送コストだ。この課題を解決するため、現地調達した宇宙資源を活用するインフラ構築プロジェクトが動き出した。小惑星の岩石そのものを推進剤として利用し、宇宙空間に「第二の月」とも呼べる資源供給の拠点を生み出す。日本のスタートアップが挑む、持続可能な宇宙経済圏の確立へ向けた新たなロードマップとは。(文=SpaceStep編集部)

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推進剤は現地の岩石。2031年の深宇宙探査へ

2026年7月、宇宙輸送テクノロジーの開発を手掛ける株式会社オーレオンスペースシステムズは、2031年に実際の小惑星を対象とした「小惑星資源探索ミッション」を実行することを正式に決定した。同社が掲げる「第二の月を作る」という壮大なビジョンの実現に向け、持続可能な宇宙資源のサプライチェーンを構築するプロジェクトである。

(引用元:PR TIMES)

宇宙空間で活動するための物資を地球から運ばず、現地で確保する「宇宙資源の現地調達(ISRU)」は、近年の宇宙開発で注目される取り組みの一つとなっている。同社はこの課題に対し、従来の化学推進剤に依存しない独自の「質量推進(マスドライバー)」技術を確立することで応えようとしている。これは、現地にある小惑星そのものの岩石を反動質量として再使用キャリア※で射出し、宇宙機と小惑星システム全体の軌道を制御する推進剤を必要としない仕組みだ。

ミッションの完遂に向けて、現在は地上での統合試験が進められている。小惑星由来の模擬レゴリスを用いた射出・回収システムの動作検証や、加速機構の反力計測・連続動作試験が行われ、宇宙環境への転用を見据えた部品仕様の策定が進む。続く2029年には低地球軌道(LEO)へ技術実証衛星を打ち上げ、宇宙空間の微小重力環境下で要素技術を検証する計画だ。すでにコア技術の特許出願も進められており、事業展開における技術的・法的な参入障壁の構築につなげる考えだ。

※再使用キャリア:小惑星の岩石を載せて射出装置まで運び、岩石を放出した後に回収して繰り返し使用する搬送装置を指す。

宇宙資源の地産地消。実体経済と結びつくインフラ

今回のロードマップが示しているのは、地球から物資を輸送するだけでなく、宇宙空間にある資源を現地で調達・活用する仕組みの構築を目指している点だ。月や深宇宙での活動が広がれば、必要な物資の一部を宇宙空間で確保することは、輸送負担を抑える選択肢の一つとなる。

地球から月や火星へ向かうシスルナ(地球・月間)空間の開発競争が激化する中、建材や燃料のすべてを地球の強い重力に逆らって運び続けることは、コストの面でも環境負荷の面でもいずれ限界を迎える。同社が構想する、小惑星の岩石をそのまま推進力に変換する技術は、地球から輸送する物資を減らし、輸送負担を軽減する可能性がある。将来的には、小惑星そのものを資源供給ステーションとして機能させる「第二の月」の構築が現実的なビジネスとして立ち上がってくる。

さらに、このプロジェクトがもたらす恩恵は宇宙空間にとどまらない。小惑星に眠る資源を地球へ還流させることがで、地上の資源危機やカントリーリスクへの対応につなげる構想も掲げている。

また、2031年の小惑星探索ミッションで埋蔵量データを確立し、資源の先行販売契約へとつなげる事業戦略は、壮大な宇宙開発を「実体経済」へと結びつけるアプローチである。技術的な実証と並行して、探索によって得たデータを資源の資産化や取引へつなげる構想は、宇宙資源開発を継続的な事業として成立させる上で重要な視点となるだろう。

推進剤フリーという技術が、宇宙資源の地産地消を可能にし、人類が宇宙に定住するための盤石な土台を築き上げる。その強固なサプライチェーンの構築に向け、日本のスタートアップが力強い一歩を踏み出そうとしている。

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