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  3. 衛星が優良物件を発掘。店舗開発の新常識

街を歩き、空き地を見つけ、法務局で持ち主を調べる。スーパーマーケットなどの新規出店を支える用地仕入れは、IT化が進む現代にあっても「足で稼ぐ」のが当たり前の泥臭い世界だった。しかし今、不動産開発の担当者たちは、靴底を減らす代わりに「宇宙からの眼差し」を頼りに理想の土地を探し始めている。高度数百キロメートルを飛ぶ人工衛星のデータとAIを掛け合わせ、市場に出回る前の優良物件を上空からピンポイントで発掘する。空から土地を見定める型破りな不動産探しが、国内トップクラスのスーパーマーケットチェーンで実際に動き出した。はるか上空から地上のビジネスを加速させる、次世代の用地開拓に迫る。(文=SpaceStep編集部)

衛星データとAIで能動的に仕掛ける用地開拓

2026年2月19日、JAXA発のスタートアップ企業である株式会社WHEREは、同社が開発する地権者とつながる不動産AIツール「WHERE」が、スーパーマーケット「ライフ」を展開する株式会社ライフコーポレーションに導入されたと発表した。

(引用元:PR TIMES

ライフコーポレーションではこれまで、新規ロードサイド店舗の用地仕入れをデベロッパーや仲介業者からの紹介に依存していた。しかし、出店計画に対して紹介数が不足するケースもあり、自社で能動的に土地を探す重要性が高まっていた。とはいえ、インターネット検索と地図アプリで当たりをつけ、実際に現地へ足を運んで確認するという従来の手法では、人手も時間もかかり、網羅的かつ迅速に候補地を探し出すことには限界があった。

この課題を解決するのが、人工衛星のデータを用いた「WHERE」である。衛星データを用いて狙いたいエリアを上空から包括的に捉え、キーワード検索によって特定の土地や建物を探索する。さらに、ピックアップした用地の用途地域や面積、公示価格などの詳細情報をシステム上で即座に取得できる仕組みだ。これにより、候補地のスクリーニングから地権者へダイレクトメールを送付するまでの工程が大幅に短縮され、効率的かつ即時的なアプローチが可能となる。

「待つ開発」から「攻めの開発」へ。宇宙が変える不動産のルール

今回の「WHERE」導入がもたらす真の価値は、店舗開発のプロセスが「市場に出た物件を待つ」受動的なスタイルから、「市場に出回る前の土地を自ら見つけ出し直接交渉する」能動的なスタイルへと根本から変革される点にある。

地球を周回する人工衛星は、広大なエリアの最新状況を常に俯瞰して捉えている。人間の目線や足では見落としてしまうような未活用の土地や、駐車場の広い老朽化した建物などを宇宙から解析し、AIが不動産データと結びつけることで、まだ誰も目をつけていない「オフマーケット」の優良物件を発掘できるのだ。

さらに同社は、単なるツールの提供にとどまらず、リストアップした地権者に対するDM送付の効率化や、実際の交渉フェーズにおいてグループ会社・宇宙不動産がサポートに入る体制も想定している。候補地の探索から実際の取引成立に至るまでを、テクノロジーと実務の両面から一気通貫で伴走するこの支援体制は、人手不足に悩む店舗開発の現場にとって極めて心強い武器となる。

「宇宙の眼」を用いたアプローチは、スーパーマーケットの出店に限らず、巨大な物流施設や工場の用地確保、さらには深刻化する空き家問題の解決など、あらゆる不動産ビジネスに絶大な威力を発揮する。長年、担当者の暗黙知と人脈、そして足で稼ぐ労力に依存してきた領域に、衛星データという客観的かつ圧倒的な視点が持ち込まれた時、企業の事業戦略は劇的なスピードと精度を手に入れる。

宇宙インフラは今や、スーパーマーケットの建設予定地を選定するための、極めて実用的なビジネスツールとして機能し始めている。衛星データが地上ビジネスの競争力を左右する時代は、すでに幕を開けているのだ。