1. SpaceStep TOP
  2. ビジネス活用を学ぶ
  3. どんな場所でもカンタンに!Starlinkが未来を変える~【連載】はじめてのStarlink(第2回)

2026.03.19

どんな場所でもカンタンに!Starlinkが未来を変える~【連載】はじめてのStarlink(第2回)

衛星通信サービスStarlink(スターリンク)のプロたちに基礎から分かりやすく教えてもらう連載「はじめてのStarlink」。前回は、Starlinkが「火星移住計画」の大きな一歩であり、従来の衛星とは「距離」と「数」が違うことを教えてもらいました。

第2回では、もっと身近な話題へ。私たちの生活でどう使えるのか、そして日本の未来にどう関わってくるのか。引き続き株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)の谷口 祟(たにぐち たかし)さん、そしてIIJのマスコット犬、バリーくんに伺いました。(文=SpaceStep編集部)

    

株式会社インターネットイニシアティブ
マーケティング統括本部 マーケティング本部 
谷口 祟 さん

Starlinkなど衛星インターネット関連の技術評価・サービス化を担うエンジニア。
ゲーム業界での出向経験も生かして、日々面白いことを考え中。
格闘ゲームの世界チャンピオンが従兄弟。

IIJ のアラート対応マスコット犬 
バリーくん

インターネットの障害・トラブルを、首に付けたベルでお知らせ。
インターネットの安定を守るため、IIJのエンジニアと日々障害対応に取り組む。
ベルを持っているバリーくんはお仕事中で、オフになるとベルを外す。

Amazonでポチる感覚? 意外と簡単な「買い方」と「使い方」

――仕組みは分かりましたが、実際に自分の家でStarlinkを使いたい場合、どうすればいいんでしょうか? なんだか難しそうです...。

バリーくん めちゃくちゃ簡単だよ~!

谷口 崇 さん(以下、谷口)  そうですね。基本的には公式サイトからネット注文するだけです。クレジットカード(またはデビットカード)があれば契約できます。注文すると、アメリカから「スターリンクキット」と呼ばれるアンテナとルーターのセットが届きます。

――えっ、それだけでいいんですか? 工事とかは?

谷口 とりあえず使い始めるだけなら、大がかりな工事はいりません。家に届いたら、アンテナを庭など空がよく見える場所に置いて、ケーブルを窓などから室内に引き込んで、電源をコンセントに挿すだけでも使い始めることができます。安定してしっかり使いたい場合は、屋根や専用のポールに固定するなど、設置工事をしたほうがより安心ですね。あとはスマホのアプリで設定すれば、すぐにインターネットに繋がります。まずお試しするだけなら、普通のWi-Fiルーターを買ってきて設定するより簡単だと思いますよ。

(引用:Starlink公式)スターリンクキット。自宅や外出先で電源につないで、空に向けるだけの簡単設置

――そんなに簡単なんですか! でも、IIJさんのような「代理店」から買う意味はあるんでしょうか? 個人でも代理店を通したほうがいいですか?

谷口 個人の場合は、公式サイトからの「直販」で十分だと思います。逆にいうと、僕らのような代理店は、主に「法人(会社)」向けに販売しているんです。

会社で使う場合、「請求書で払いたい」とか「特殊なネットワークを組みたい」といった要望が出てきますよね。そういう難しい要望に応えたり、サポートしたりするのが代理店の役割なんです。だから、みなさんが家で使う分には、Amazonで買い物をするような感覚で始めてもらって大丈夫ですよ。

フェスに山小屋、洋上まで! 「空が見えればどこでも」の強み

――なるほど、個人なら手軽に始められるんですね。では、実際にどんな場所で使われているんでしょうか?

谷口 やはり多いのは、光ファイバーなどの回線が引けない場所ですね。たとえば、山奥の別荘や、キャンプ場。それから、海の上でも使えます。釣りを楽しむ人が船に積んでいたり、フェリーの船内Wi-Fiとして使われていたりしますね。これまで電波が届かなかった場所でも、Starlinkなら空さえ見えていれば繋がりますから。

――山や海でネットが使えるのは便利ですね。

谷口 あと、意外な使い道としては「人が多すぎて繋がらない場所」での活躍です。

たとえば大規模な音楽フェス。何万人もの人が一度に集まると、携帯電話の電波が混雑して繋がらなくなってしまいますよね。そんな時、Starlinkをバックアップとして用意しておけば、混雑に関係なく通信を確保できるんです。

――たしかに、フェスやイベント会場だとスマホが全然繋がらないことあります!

谷口 そうなんです。もちろん、光ファイバーが引ける場所なら、有線のほうが安くて速い場合も多いです。でも、「工事不要ですぐ置ける」「どこへでも持ち運べる」という点で、Starlinkは唯一無二の存在なんです。これからは、家では光回線、外や繋がりにくい場所ではStarlinkというふうに、適材適所で使い分けるのが当たり前になっていくと思いますよ。

(引用:Starlink公式)みぞれ、豪雨、強風などの環境下にも強い性能を持っている

スマホと直接つながる!? Starlinkが変える未来

――「適材適所」で使い分ける時代になるんですね。では、これから先、Starlinkによってどんな未来が待っているのでしょうか?

谷口 今、まさに進んでいるのが「Direct to Cell(ダイレクト・トゥ・セル)」という技術です。これは、Starlinkの衛星と、みなさんが持っているスマートフォンが「直接」繋がるというものです。

――えっ、アンテナがいらなくなるんですか?

谷口 そうです。専用のアンテナすら不要になって、スマホを持って空が見える場所にいれば、どこでも繋がるようになる。つまり、「圏外」という言葉がなくなるかもしれないんです。山登りをしていても、災害で地上の基地局が壊れてしまっても、空を見上げれば衛星と繋がって連絡が取れる。そんな安心安全な未来が、もうすぐそこまで来ています。

――それはすごい...! 地上の携帯基地局がいらなくなると、風景も変わりそうですね。

谷口 そうですね。これまで携帯電話会社は、地上に設置した携帯基地局を、山奥や過疎地にも一生懸命アンテナを立ててエリアを広げてきました。でも、採算が合わなくて維持が大変な場所も多いんです。

これからは、人が多い街中は地上の携帯基地局でカバーして、山や離島、遠く離れた海の上は、宇宙(そら)にある携帯基地局-つまりStarlinkの衛星が直接つながる形でカバーする。そうやってコストを下げながら、どこでも繋がる環境を実現していくことになるでしょう。


(引用:Starlink公式)Direct To Cellは、空が見える場所ならどこでも、あらゆるLTE携帯電話で利用できる。2024年、アメリカのハリケーンHeleneとMiltonによる洪水・山火事が起きた際は被災地で150万人以上が、数百万件のSMSと緊急警報を受信成功した

日本企業の勝ち筋は「組み合わせ」にあり!

――夢が広がりますね。ただ、ロケットも衛星も全部SpaceX(アメリカ)が作ってしまう中で、日本の企業や私たちには何ができるんでしょうか? 全部お任せでいいんでしょうか。

谷口 たしかに、SpaceXはロケットから衛星、打ち上げまでを全部自分たちでやってしまう会社です。そこに直接入り込むのは簡単ではありません。

でも、SpaceXだけですべてが完結するわけではありません。どの国の企業であっても、「すでにあるものをどう組み合わせて、新しい価値を生み出すか」というところに、大きなチャンスがあると僕は思っています。

Starlinkはあくまで、最強の「土管(インフラ)」です。水道管みたいなもので、それ自体はただデータを流すだけ。重要なのは「その土管を使って何をするか」です。

たとえば、ドローンと組み合わせて新しい物流を作るとか、建設現場をもっと便利にするとか。この新しいインフラを使って、どんな面白い遊びやビジネスを考えるか。そこが勝負になってくると思います。

株式会社インターネットイニシアティブ マーケティング統括本部マーケティング本部 谷口 祟 さん、IIJ のアラート対応マスコット犬  バリーくん

――なるほど、土管の上で何をして遊ぶか、ですね。

谷口 その通りです。「もっと便利に」「もっと面白く」と工夫する余地は、まだまだたくさんあるはずです

Starlinkという新しいインフラを使って、どんなソフトを作るか、どんな機械を動かすか。そうしたアイデア次第で、新しい価値やビジネスは、世界中のどこでも生み出していけると思います。

――インフラが整った今こそ、アイデア勝負の時代というわけですね。谷口さん、バリーくん、本日はありがとうございました!

バリーくん またね~!

編集後記

「すべては火星に行くため」。その壮大な目的のために作られたStarlinkが、めぐりめぐって私たちの地上の生活を便利にしている。その事実にワクワクが止まらない取材でした。

空を見上げれば、そこには多くの衛星が飛んでいて、世界中をインターネットで繋いでいる。そう想像するだけで、いつものスマホの画面が少し違って見えてきませんか?

次回も、宇宙ビジネスの最前線を走る企業の「生の声」をお届けします。お楽しみに!