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2026.03.10

中堅・中小企業は宇宙でどう儲ける?【連載】ゼロから学ぶ宇宙ビジネス(第6回)

宇宙ビジネスというと大企業や国家事業の専売特許に思われがちだが、実際には中堅・中小企業が果たす役割は小さくない。既存の技術を転用することで新しい収益機会を得る企業が現れ始めている一方、販路の不透明さや人材不足など特有の課題も抱えている。本連載第6回では、中小企業のリアルな挑戦と本音に迫る。(文=SpaceStep編集部)

教えてくれたのは

株式会社三菱UFJ銀行
サステナブルビジネス部 イノベーション室 室長
橋詰 卓実さん

250917-1-037 (1)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
コンサルティング事業本部 兼
イノベーション&インキュベーション部  副部長 プリンシパル 
山本 雄一朗さん

中小企業が挑む宇宙ビジネスの最前線

宇宙産業は大企業のもの――そうした先入観は今も根強い。しかし実際には、中堅・中小企業が多様な形で参入し始めている。三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 山本 雄一朗さんは、宇宙県と呼ばれる鹿児島県で既に宇宙関連事業を事業化している中堅・中小企業を例に挙げた。例えば電子機械器具メーカーの株式会社エルムは人工衛星自動追尾装置を開発し、国内外に地上局を納入している。地元発テクノロジー企業の飛鳥電気式会社は射場設備や地上局の設計・運用で実績を積み、1985年の創業以来30機以上の衛星追跡プロジェクトに関わってきた。さらに精密機械部品加工メーカーの鹿児島精機株式会社は宇宙関連機器部品の製造を手がけ、2024年から米国企業への納品も始めている。

一方で、研究実証段階から事業化に進もうとする、積極的な企業も少なくない。IT支援を手がける株式会社リリーは、地域課題解決型の衛星データ活用プロジェクトに参画している。先端技術系スタートアップの株式会社メタシステム研究所はAIを活用したソリューション開発を進め、準天頂衛星システム「みちびき」を使った実証事業に既に加わっている。これらはまだ事業化途上だが、宇宙技術と既存事業の組み合わせが新しい市場を切り拓く可能性を示している。

株式会社三菱UFJ銀行 橋詰 卓実さんは「日本には宇宙ビジネスに転用できる要素技術を持つ企業が本当にたくさんある」と指摘する。実際、知られざる部品メーカーがスペースXなど海外大手に年間数千個単位で部品を供給し、世界市場で不可欠な役割を果たしているケースもあるという。しかし多くの企業は「自分たちの技術が宇宙に使える」という発想自体を持っていない。その意識のギャップこそ、裾野拡大の最大の課題である。

意思がなければチャンスは転がってこない

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが中小企業に対して宇宙ビジネスに抱く本音を横断的に調査・ヒアリングした結果は興味深い。その中で浮かび上がった大きな課題は「参入した後の受注や販路、取引機会等の一連のプロセスの不透明性」による参入の忌避や、拡大へ二の足を踏んでしまう状況だ。これは、自社の技術が宇宙市場で通用する確信を持っていても、マーケットの全体像やサプライチェーンの構造が把握しにくいという、宇宙領域の情報の非対称性ならではの特徴もその一因と言える。

未参入企業にとっての壁はさらに高い。「宇宙は大企業や国家プロジェクトの領域であり、自分たちには関係がない」と感じる企業が多く、自社の技術が応用できるという発想自体を持たないのも当然であろう。加えて、研究開発や実証実験にかかるコスト負担、人材の確保難、補助金制度や支援策の情報不足といった要因が重なり、挑戦への第一歩を踏み出せない。

もう1つ、宇宙産業参入における課題は「時間軸」だ。宇宙事業においては、量産受注等により売上に本格的に反映されるまで10年ほどの時間軸を要するとされる。これは、中堅・中小企業にとって参入の大きなボトルネックとなる。ただし、人口減少等による既存事業売上が中長期で減少する可能性が高まるなか、宇宙産業に足元から取り組み始めることで、将来の既存事業売上の増加や、宇宙事業自体での売上獲得も起こりうる。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング資料より引用

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