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2026.02.17

西アフリカの濁流を遥か上空の「眼」が食い止める。Solafuneがセネガルで挑む、データによる防災の民主化

激化する気候変動により、濁流が街を飲み込む。インフラが未整備なグローバルサウス諸国にとって、洪水は人命を奪うのみならず、経済発展をも阻害する深刻な脅威だ。広大な国土を監視し、予測するシステムを自国だけで構築するには、あまりに高い壁が立ちはだかる。

この不条理を、日本のスタートアップが衛星データ解析という「知能」で突破しようとしている。株式会社Solafuneが、セネガル共和国で開始する洪水リスク分析事業。それは、宇宙技術を特定の強国だけのものではなく、地球上のあらゆる脆弱な地域を守るための「知のインフラ」へと拡張させる挑戦である。(文=SpaceStep編集部)

セネガル宇宙研究庁との共創で描く「未来のハザードマップ」

(引用元:PR TIMES

2025年末、日本の宇宙スタートアップであるSolafuneの事業が、経済産業省の「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」に採択された。同社が進めるのは、セネガル共和国における衛星データを活用した洪水リスク分析の高度化および予測技術の実証だ。

セネガルでは昨今、気候変動の影響により洪水の発生地域と頻度が拡大しており、迅速な対応が喫緊の課題となっている。しかし、人的リソースや地上観測インフラが限られている同国にとって、従来のアナログな管理手法では広範な被害把握に限界があった。その一方で、セネガルは宇宙研究庁(ASES)を新設するなど、先端技術によるDXに強い意欲を示している。

今回のプロジェクトでは、Solafuneが開発する衛星データ解析技術を用い、複数のアプローチで洪水の脅威に立ち向かう。まず、過去の浸水範囲をシミュレーションし、現地の状況に即した高精度なハザードマップを作成する。さらに、衛星データを用いた準リアルタイムの監視体制を検証し、被害把握の迅速化や脆弱な地域の特定を行う。また、実証の過程では現地でのワークショップ開催などを通じて技術知見を移転し、キャパシティビルディングを図る。

実証実施にあたっては、セネガル宇宙研究庁を窓口に公共安全庁や環境省などの政府機関と連携し、衛星データとAIを融合させた「自国で運用可能な防災モデル」を確立することを目指している。これは単なる技術提供にとどまらず、現地のレジリエンス(強靭性)を底上げするための草の根DXと言えるだろう。

アフリカで築く、日本発「データ防災」の標準モデル

今回のセネガルでの取り組みが示唆するのは、宇宙利用のあり方そのものの転換だ。これまで、衛星の恩恵を十分に享受できるのは、莫大な予算を投じて自国で衛星を打ち上げ、運用できる一部の国々に限られていた。しかし、Solafuneのような「解析ソフトウェア」に特化したスタートアップの台頭が、その構造を根本から変えようとしている。

自国でハードウェア(衛星機体)を持たずとも、世界中に存在する膨大な衛星データを高度に解析する「知能」さえあれば、最高水準の安全保障や防災対策を手に入れられる。これは、宇宙開発における「持てる国」と「持たざる国」の格差を解消する、まさに「インフラの民主化」に他ならない。

また、日本発のスタートアップが、セネガルというグローバルサウスの最前線で技術実証を行う意義も極めて大きい。アフリカ諸国は洪水のみならず、農業や都市計画、環境保全といった多岐にわたる分野で、衛星データによるソリューションを渇望している。セネガルでこの防災モデルが「標準」として定着すれば、同様の課題を抱える周辺国への横展開は容易になる。日本企業の技術が、グローバルサウスにおける事実上の標準(デファクトスタンダード)を勝ち取るための有力な足掛かりとなるのだ。

西アフリカの空の下で進められるこの実験は、宇宙技術が「憧れの対象」であった時代を終わらせるだろう。地上の不条理をデータで解き明かす「知力」としての宇宙技術が、世界の新たな標準へと昇華する日は、そう遠くないはずだ。