
宇宙ビジネスの成長を牽引しているのは、もはやロケットや衛星の製造ではない。今、注目を集めているのは衛星データの活用である。災害対応から環境モニタリング、DXやESGへの貢献まで、その可能性は社会の隅々に広がっている。本連載第5回では、衛星データが「見えないものを見える化」し、社会課題解決の基盤となる可能性を探る。(文=SpaceStep編集部)
教えてくれたのは

株式会社三菱UFJ銀行
サステナブルビジネス部 イノベーション室 室長
橋詰 卓実さん

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
コンサルティング事業本部 兼
イノベーション&インキュベーション部 副部長 プリンシパル
山本 雄一朗さん
宇宙ビジネスの中核は今や「つかう」側にある。株式会社三菱UFJ銀行 橋詰 卓実さんは「衛星データは社会課題解決に直結するダウンストリームの中心領域である」と強調する。従来、宇宙産業はロケットや衛星の製造といったハード主体で語られてきた。しかし今日では、地上社会と交わり、デジタル技術やAIと融合することで新しい価値が創出されている。その象徴が「見えないものを見えるようにする(See the Unseen)」という衛星データの力である。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング資料より引用
衛星データが持つ独自の強みは、広範囲を一度に撮影し、解析し、判断に活用できる点にある。例えば温室効果ガスの一種であるメタンは、従来の地上観測では漏洩箇所の特定が難しかった。しかし衛星データを活用することで、LNGプラントやパイプラインからの排出状況を俯瞰的に捉え、ピンポイントで漏洩源を突き止められる。橋詰さんは「これは環境規制や国際ルールに対応するための基盤となる」と語る。
三菱UFJ銀行の資料より引用
さらに森林分野でも活用が進む。樹齢や樹高を衛星で推定し、CO₂吸収量を精緻に計測することで、信頼性の高いカーボンクレジットを生み出す仕組みが構築されつつある。これはESG投資の文脈で不可欠な評価基盤となり、日本発の技術で国際標準化を狙う動きも出ている。特に日本のような社会課題先進国において、人口減少に伴ってヒトから衛星を含めたテクノロジー活用へ代替する流れが今後加速すると予想される。
三菱UFJ銀行の資料より引用
一方、防災・減災の現場でも大きな役割を担う。能登半島地震では、被災地の道路寸断状況を衛星画像から把握し、「どの経路なら救援物資を届けられるか」を示す情報が行政に提供された。災害時に地上の通信網が途絶しても、宇宙空間の観測は止まらない。橋詰さんは「国民生活の安定を守るインフラとして、衛星データは必要不可欠だ」と指摘する。