(引用元:PR TIMES)
「人は亡くなったら、お星さまになるんだよ」。誰もが一度は耳にしたことがあるこの言葉。それがもし現実になる日が来たら、夜空を見上げる意味はどう変わるのだろうか。埼玉県の葬祭ブランド「さがみ典礼」が、宇宙ビジネス企業SPACE NTKと提携し、故人の遺骨を乗せた人工衛星を打ち上げる「宇宙葬」サービスの本格展開へ乗り出す。これは単なる散骨ではなく、大切な人が夜空に輝く星となり、数年の時を経て流れ星として生涯を締めくくるという、壮大な弔いの形だ。テクノロジーが、古くからの祈りを現実のものへと変えようとしている。
この未来的な弔いを実現するのが、さがみ典礼を展開するアルファクラブ武蔵野株式会社と、株式会社SPACE NTKが共同で提供する「Space voyage α」である。SPACE NTK社は、民間宇宙開発企業でトップを走る米国のSPACE X社と日本で初めて直接打ち上げ契約を結び、これまで前例のなかった「遺骨だけを納めた人工衛星」の打ち上げを成功させた実績を持つ。故人の遺骨を納めた専用カプセルは、そのパートナーシップのもと、SpaceX社の最新鋭ロケット「ファルコン9」によって、遥か宇宙空間へと旅立つのだ。
(引用元:株式会社SPACE NTK公式サイト)
打ち上げ後、遺骨を納めた人工衛星は高度500kmから600kmの宇宙空間でロケットから切り離され、地球を周回する軌道に入る。この高度は、国際宇宙ステーション(高度約400km)よりもさらに高い、静寂な宇宙の領域だ。そこから数年間、人工衛星は故人の魂を乗せた“星”として、静かに地球を見守りながら輝き続ける。そして、長い旅路の最後には地球の大気圏に突入し、まばゆい光を放ちながら夜空を駆ける一筋の「流れ星」となって燃え尽きるのだ。実際に、生前「いつか流れ星になりたい」と両親に語っていた7歳の少女の遺骨が、このサービスによって宇宙へと旅立ったという。故人の願いが現実の出来事として成就する。それこそが、この宇宙葬が提供するほかにはない価値と言えるだろう。
さらに、遺骨の一部をカプセルに入れ月面探査車に搭載して月へ送る「月面納骨」や、遺骨ではなくメッセージや思い出の品を宇宙に届ける「宇宙想」といったプランも用意されており、多様な想いに応える態勢が整えられている。打ち上げの様子はインターネットでライブ配信され、希望者は現地での見学ツアーに参加することも可能だ。
「宇宙葬」の登場は、現代社会における弔いのあり方と、急速に身近になる宇宙との関係性に、新たな可能性を示す象徴的な出来事である。近年、墓じまいや葬儀の小規模化が進み、故人を偲ぶ拠り所が失われつつある「弔い離れ」が静かな社会問題となっている。そんな時代に、「空を見上げれば、いつでも故人を想うことができる」というコンセプトは、現代人のライフスタイルや価値観に寄り添った、新しい祈りの形を提示している。
この壮大な構想がビジネスとして成立した背景には、SpaceX社をはじめとする民間企業の台頭による「宇宙輸送コストの劇的な低下」がある。かつては国家プロジェクトの舞台であった宇宙が、今や個人の想いを託せる開かれたフロンティアへと変貌を遂げつつあるのだ。
しかし、このサービスが人々の心を強く惹きつけるのは、こうした社会背景や技術的な実現性だけが理由ではない。その真の価値は、私たちの文化や心といった、より深い部分に触れる点にある。「人は亡くなったらお星さまになる」という、私たちが親しんできた物語を、科学の力で現実の体験へと昇華させたのだ。葬儀という極めてパーソナルな文化と最先端技術が結びつくだけでなく、テクノロジーが人の心に寄り添い、古くからの死生観と融合することで、これまでにない深い感動が生まれる。この「宇宙葬」は、弔いの文化に新たな1ページを刻むとともに、宇宙と私たちの未来の関係性を豊かに照らし出す、希望の光となるだろう。