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2025.11.27

ポストISS時代を担う世界初の民間宇宙ステーション「Haven-1」、その心臓部を支える日本の大学技術


(引用元:PR TIMES

国際宇宙ステーション(ISS)が2030年に退役を迎える中、宇宙開発の主役は国家から民間へと移り変わろうとしている。その象徴となるのが、2026年にも打ち上げが予定される世界初の商用宇宙ステーション「Haven-1」だ。この未来の宇宙実験室で、多様な実験を可能にする“心臓部”とも言える重要な制御基板の開発に、日本の大学が貢献している。手掛けるのは、東京理科大学スペースシステム創造研究センターだ。ISSでの実績もある独自技術を武器に、宇宙利用の新たな扉を開こうとしている。

民間宇宙ステーションの実験を司る「制御基板」、東京理科大が挑む短納期開発

2030年の国際宇宙ステーション(ISS)退役後、地球低軌道での活動を担う存在として期待されているのが、米Vast社が開発を進める商用宇宙ステーション「Haven-1」だ。もし計画通り2026年5月に打ち上げられれば、世界初の民間による宇宙ステーションとなる。この新たな宇宙の拠点では、さまざまな企業や研究機関が実験を行うことが想定されている。

その実験装置のパートナーとしてアジアで初めて選ばれたのが、有人宇宙システム株式会社(JAMSS)だ。JAMSSは「Haven-1」内に自社開発の実験装置を設置し、顧客に宇宙実験の機会を提供するサービスを展開する。この装置内には最大12個の小型実験ユニットを搭載でき、それらに電力や通信を供給し、全体を管理・制御する役割を担うのが、今回東京理科大学が共同開発する「制御基板」である。いわば、多様な実験を安全かつ円滑に進めるための司令塔だ。


(引用元:PR TIMES

この制御基板開発で特筆すべきは、その開発期間の短さだ。東京理科大学スペースシステム創造研究センター(SSI)は、契約からわずか1年以内という、宇宙開発の世界では異例のスピードで開発を完了させる計画だ。 これを可能にするのが、SSIが持つ独自技術と開発体制にある。SSIセンター長の木村 真一 教授は「設計から製造、試験まで全て自分たちでできるのが私たちの強み」と語る。民生品を積極的に活用し、低コスト・短納期を実現するノウハウが、民間主導で加速する宇宙開発の新たな時代に求められているのだ。


(引用元:PR TIMES

ISSでの実績を民生品で再現。大学発技術が加速させる「宇宙利用の民主化」

東京理科大学が挑む短納期開発を支えているのは、ISSで既に実績のある技術だ。彼らが開発した小型自律分散型環境センサー「TEM」は、2025年5月にISSの「きぼう」日本実験棟で軌道上実証に成功している。宇宙飛行士の大西 卓哉 氏が操作を担当し、ISS内の空気環境データを取得したこのセンサーのコア技術が、今回の制御基板にも活かされているのだ。


(引用元:PR TIMES

注目すべきは、その中身だ。「TEM」や今回の制御基板には、市販の小型コンピュータ「Raspberry Pi」のような民生品が積極的に採用されている。かつては高価で特殊な部品でなければならなかった宇宙用機器を、広く普及している民生品で代替することで、開発コストと期間を劇的に圧縮できる。ISSという過酷な宇宙環境で民生品ベースの機器を正常に動作させた実績は、今後の宇宙開発においても大きな意味を持つ。

木村教授は「今後もTEMの技術を活用し、宇宙の利用拡大に貢献していきたい」と語る。この取り組みは、単に一つの部品を開発するだけに留まらない。高コスト・長期間という宇宙開発の常識を覆し、より多くの企業や研究者、さらには個人が宇宙を利用できる「宇宙利用の民主化」を推し進めるための大きな一歩と言えるだろう。大学が持つ先進的な知見とスピーディーな開発力が、ポストISS時代の新たな宇宙経済圏を築くための重要な鍵となっていくことが期待される。